印パ会談直前の襲撃事件 インド外交のゆがみとは

パキスタン

 インド軍の軍服を着用し、ライフルと手榴弾で武装した兵士たちが26日、インド統治下にあるパキスタンの国境近くのカシミール地区で警察署と軍施設を襲い、12人を殺害した。

 襲撃は、インドのマンモハン・シン首相とパキスタンのナワーズ・シャリーフ首相が、国連の年次総会に合わせて29日に会談を行うと、25日に発表した翌日のことであった。

 今回の襲撃は、2国間会談の中止を目的としているとみられている。

 インドとパキスタンは、第二次世界大戦直後1947年に建国したが、それ以来カシミール地区の統治権を巡って紛争が絶えない。両国はこれまでに少なくとも3度に及ぶ戦争を繰り返している。
当のカシミール地区では、両国からの独立を望む意見が多数派、問題をさらに複雑にしているようだ。

【ふたつの核保有国】
 米国と西側諸国は、両国に関係正常化をすすめるよう無言で圧力をかけている、とフィナンシャル・タイムズ紙が報じている。
 
 イスラマバードの西側外交官は、「ふたつの核保有国の緊張状態が制御不能になることは、あってはならない。」と述べた。また、「会談がすぐに結果を出せなくても、インドとパキスタンが建設的な関わりを持ち続けることが重要だ」と2国間首脳による会談を評価している。

【和平を望まない勢力】
 インドのシン首相は、長年パキスタンとの良好な関係を望んでいることが知られている。また、パキスタンのシャリーフ首相は、1999年の在任当時、インドとの和平合意に署名している。

 しかし、両国には、緊張関係を利用し、政治的経済的に利益を得る多くの者がいるのだ、とニューヨーク・タイムズ紙が報じている。

 ロイターによると、襲撃直後、インドの右翼野党政治家たちは、29日の2国間会談中止を求めた。野党第1党であるインド人民党党首ヤシワント・シンハ氏は、インドへの攻撃をやめさせることができないのなら、パキスタンと話し合うことに何の意味もないと発言したという。同氏は、「カシミール地区に関して、弱気の外交を進めることは、インドが大小周辺国からの要求に言いなりになるような非力な国だと示すことになるだろう。」と発言していることをニューヨーク・タイムズ紙が報じている。

 フィナンシャル・タイムズ紙は、パキスタン専門家の、和平を望む文民出身の首相にとって、軍に握られている外交政策を改善することは難しいという見解に触れ、和平が難航することを予測している。

 カシミール地区の紛争を調査している南アジア・テロリズム・ポータル(SATP)によると、2012年は年間で殺害された人数が117人だったのに比べ、今年は26日の襲撃までに、軍の44人を含む128人が死亡しているという。

 今年に入り争いが激化しているのは、偶然ではなく、パキスタンは今年、インドでは2014年に総選挙が控えていることが関係しているのだろうと、ニューヨーク・タイムズ紙は報じている。

Text by NewSphere 編集部