処分には10億ドル…誰が化学兵器を処理するのか?シリアに平和は訪れるのか

 ガーディアン紙はシリア政府が、内戦がすでに膠着状態に陥っており、両陣営ともに勝利が見えなくなったとして、和平の姿勢を示したと報じた。

【民主化するから自決権と支援を求む】
 シリアのジャミル副首相によると、シリア経済はGDP2年分に相当する約1000億ドルを失っている。シリアは諸国からの「圧力ではなく支援」を必要としており、「外部介入の終了、停戦、平和的な政治プロセスの立ち上げ」を求めているという。ジャミル副首相は、シリアが現在の形の体制を捨て、「外部からの介入なく、民主的な方法で自己決定」を行うべきであり、「進歩的な改革を実現するために、西側とその他、シリアに関与しているすべての人々には、私たちの肩から降りてもらう必要があるのです」と述べた。

 同紙は、ジャミル副首相は元々バース党独裁を阻止する目的で入閣した、世俗的な小政党出身の閣僚だと説明している。

 ジャミル副首相の言う改革がアサド大統領の退陣を意味するのかどうかは明示されていないが、同紙は、反政府勢力のうち西側の支援する「シリア国民連合」は、大統領退陣と化学兵器攻撃の責任追及を断固要求していると報じている。

 和平交渉が実現したとしても、反政府勢力を誰が代表するかについては米露間で揉めており、米国はシリア国民連合単独を、ロシアは「民主的変革のための国家調整機関」およびクルド人代表団も加えることを主張しているようだ。

【化学兵器の処分は可能なのか】
 一方アサド大統領は、米露と合意した化学兵器の放棄について、処分には1年余りの時間と10億ドル程度の費用が必要だと訴えている。フィナンシャル・タイムズ紙によれば、専門家の意見としてもそれは妥当な見積もりであるという。米国は21日までに化学兵器備蓄の目録提出と、9ヶ月以内の処分完了を要求しているが、それは現実的ではないということになる。

 アサド大統領は、「米政府がその費用を負担し、有毒物質を米国に持って行くことの責任を取れる状態だというなら、それでいいのですが」と発言している。化学兵器の解体施設はロシアにもあるがロシアも乗り気ではなく、さらに、テロと内戦の脅威下において、化学兵器を現地で解体せず第三国に搬出することは、専門家によれば論外である。

 ロシアのプーチン大統領は、シリア政権が処分計画を時間通り完遂できると確信はできないとしつつもシリアは本気であると擁護した。米当局者らも、これらの要件は「厳しくて難しい締め切り」というより「時間割」であると述べているという。それでもケリー米国務長官は19日、「安全保障理事会は来週、行動を起こす準備をしなければなりません」などと発言し、緊張を高めている。

Text by NewSphere 編集部