現地時間6月24日、パリ・ファッションウィークで初日の最後に発表されたのは、ファレル・ウィリアムスによるルイ・ヴィトン 2027年春夏メンズコレクション。巨大な波がうねる幻想的なランウェイを舞台セットとガラス張りのキャンピングカー、月明かりに照らされた幻想的な空間のなかで披露されたコレクションは、壮大な演出以上に”服”そのものが印象を残した。

AP Photo / Aurelien Morissard

ファレルが提示したのは、“サーファー・ダンディ”という新たな男性像。旅と海を想起させるシネマティックな空間が広がり、フロントロウには、ジェレミー・アレン・ホワイト、チャールズ・メルトン、フューチャー、ミッシー・エリオット、ローラ・ヤング、ココ・ジョーンズ、クエヴォ、ヴィクター・ウェンバンヤマ、ジャクソン・ワン、BamBam、フィン・ベネットら豪華ゲストたちが来場した。

会場には巨大なバレルウェーブ(チューブ状の波)が設置され、砂浜を再現した屋外セットから霧が立ちのぼる。真夏の暑さのなか、その波はショー全体にリアリティを与え、サーフィンというテーマをより鮮やかに演出していた。

波の中から現れたのは、陽に焼け、潮風をまといながらも洗練されたテーラリングを纏うサーファーたち。ウェットスーツの機能性とテーラードウェアを掛け合わせたスタイルを軸に、モノグラムをあしらったダイビングスーツ、風合い豊かなデニムやアウター、ビーズ刺繍を施したボンバージャケット、ロゴ入りサーフボードなどが並んだ。

ファレルがルイ・ヴィトンで繰り返し描いてきた「ダンディ」は、今シーズン、海へと向かう。とはいえ、それはラフなビーチカルチャーではなく、仕事を終え、カシミアやラゲージを携えて向かうような、どこか都会的で余裕のあるリゾートの姿だ。

AP Photo / Aurelien Morissard

サーフカルチャーを、より洗練されたかたちで

今回のコレクションは、サーフィンの要素を過度に演出するのではなく、ディテールへと落とし込んだ点が印象的だった。

ウェットスーツの素材感をテーラリングに取り入れたほか、モノグラム入りのダイビングウェアや、長年着込んだような風合いのジャケット、日差しや潮風にさらされたような色褪せたフーディが登場。フードのドローコードにはゴールドのLVパーツがあしらわれ、カジュアルなアイテムにもラグジュアリーなアクセントを添えている。

AP Photo / Aurelien Morissard

デニムやコートには絞り染めを思わせる藍色のグラデーションを採用し、ボンバージャケットには重厚なビーズ刺繍を施すなど、クラフトマンシップも随所に感じられた。また、異なる素材に見せかけるトロンプルイユ(だまし絵)の技法も継続して採用。遠目にはシンプルなアイテムに見えても、近づくほど繊細な手仕事が浮かび上がる。

ショー終盤には、サーフィンを終えた後のリラックスした時間を思わせるローブコートや柔らかなジャケット、タオルを肩に羽織ったようなレイヤードスタイルも登場し、コレクションに穏やかな余韻を与えた。

さらに、新作のフラットソールスケートシューズは、ファレル自身のルーツであるスケートカルチャーや〈Billionaire Boys Club〉〈Ice Cream〉、そしてNIGOとの歩みを思い起こさせるデザインとなり、サーフというテーマにストリートのエッセンスを加えていた。

AP Photo / Aurelien Morissard

演出よりも、服そのものが主役だったショー

これまでのファレルによるルイ・ヴィトンのショーは、ポンヌフ橋を黄金のダミエで覆ったデビューショーをはじめ、壮大な演出でも話題を集めてきた。

今回も、サーファーのマイキー・フェブラリーとジュリアン・ウィルソンが出演する映像演出や、クエヴォ、ファレル、アンジェリーク・キジョーによるサウンドトラック、オーケストラとゴスペルクワイアによるライブパフォーマンスなど、スケールの大きな演出が用意されていた。

AP Photo / Aurelien Morissard

しかし、それらが服をかき消すことはなかった。巨大な波は確かに圧倒的だった。それでも最後まで印象に残ったのは、その舞台をしっかりと成立させるコレクションそのものだった。

なおルイ・ヴィトンは今回、海洋保全団体「Coral Gardeners」との取り組みも発表。2026年にはフランス領ポリネシアで1,000本のサンゴを植え付け、約250平方メートルのサンゴ礁再生を支援する予定だ。

フィナーレでは、巨大な波を背にファレル・ウィリアムスがランウェイへ姿を現した。壮大な演出がありながらも、この日もっとも存在感を放っていたのは、紛れもなく「服」だった。

子どもたちと抱擁を交わすファレル・ウィリアムス AP Photo / Aurelien Morissard


By THOMAS ADAMSON AP Fashion Writer