インド市場が魅力を失った理由 政府・中銀への批判も

 22日、インドルピーが対ドル65.56の最安記録に至った。インド準備銀行(RBI)によると疑われる介入で翌日には63.20まで回復したが、5月には1ドル55ルピー、2011年には45ルピー程度であったことからすれば、ルピーは下落が止まらない状態だ。

【もはやルピー買い支えは愚策】
 ブルームバーグは、米連邦準備制度(FRB)の量的緩和縮小および利上げの見通しによって、インドをはじめ新興市場が海外投資における魅力を失ったことを報じている。

 だが同時に、元々のインド経済の問題点から、外国投資家どころかインド人でさえインドには投資していない、と指摘している。同紙は、昨年以来の成長鈍化や、不動産・鉱業・政府契約などの分野を中心に汚職が蔓延し過ぎていること、政府の投資自由化改革も多すぎる附則が邪魔をして不発に終わっていること、といった問題点を挙げた。

 同紙は、直接的にルピーを買い支えようとする政策には期待できないと断じ、いっそルピー安に乗じて輸出拡大を狙うべきだと提言した。

 フォーブス誌も、RBI が7月中旬、ルピー安定化を狙って金融引き締め策を採ったことを失策と批判。今やインド市場の信用は「他の四大発展途上国のどれよりも少ない」と評している。

【仕送り頼みの財政計画】
 フィナンシャル・タイムズ紙は、ルピー安に伴い、在外インド人からの送金額が増大していることを報じた。こうした送金は通常、利殖ではなく家族を扶養する目的のものであるが、相場格差のために利ざやを稼ぐ余地が拡大したため、借金をしてでも送金する傾向が見られるという。

 そしてインド政府も、現在GDPの4.8%ある財政赤字を埋め合わせる財源として、こうした送金をすでにアテにしていると報じられている。先月、RBIは在外インド人向けのポートフォリオ投資のルールを簡素化し、一般的な送金口座の上限レートを廃止した。また一部のアナリストは、政府がこうした出稼ぎインド人向けの外国為替建て債券を発行することが、最も強力な短期的解決策だと提唱しているという。

Text by NewSphere 編集部