「真意わかりにくい」麻生氏のナチス発言に海外紙は厳しい声

 麻生副総理兼財務相が29日、国家基本問題研究所主催のイベントで、「ドイツのワイマール憲法はだれも気づかないうちにナチス憲法に変わっていた。あの手口に学んだらどうか」などと語った。

 同研究所は改憲を求める保守派のシンクタンクで、戦時中の慰安婦の強制連行に日本軍が関与したとの主張を否定し物議を醸したこともある。

 麻生氏は1日、「真意と異なり、誤解を招いたことは遺憾だ」と述べ、発言を撤回した。改憲については落ち着いて議論すべきであり、ナチスとワイマール憲法は否定的な意味で例示したと説明した。

 菅官房長官も1日午前の記者会見で、安倍内閣としてナチスを肯定することは断じてないとしている。

 海外紙は、失言癖のある日本の政治家がまた不快な発言をしたと報じた。

【国際的な批判に発展】
 ロサンゼルスに本部のあるユダヤ人人権団体「サイモン・ウィーゼンタール・センター」は30日に声明を発表し、麻生氏に発言の説明を求めていた。

 同センターは声明で「どんな手口をナチス政権から学ぶ価値があるのか。統治をめぐるナチス第三帝国からの唯一の教訓は、権力を持つ者がどう振る舞ってはいけないかということだ」と批判した。

 一方、韓国外務省の報道官は30日、「このような発言が多くの人々を傷つけることは明白だ」「日本の政界リーダーたちは発言や行動に慎重になるべきだ」と語った。

 ハフィントン・ポストは、中国・韓国と緊張が高まる中、安倍首相率いる自民党は「米国依存の平和憲法を改正し、日本の防衛力を一人前の軍事力と定義したい」とみている。これに対し中韓政府は、日本の軍国主義化を強く懸念しているようだ。

【麻生氏の真意とは?】
 韓国などの批判は、麻生氏の発言は「ナチスのように改憲すべき」という解釈に基づくものだ。

 一方、麻生氏が自ら説明したように、「ナチスのように改憲すべきではない」だと解釈する声もあった。

 ただ、ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、麻生氏の意図するところが何にせよ、同氏の発言はとりとめがなく、異なる解釈につながる可能性があると指摘した。

 同記事には67件のコメントが寄せられている(1日19時時点)。中には、「日本語の解釈は難しい」ので、上記のような説明は逃げている、といった、記事に批判的な意見も書き込まれていた。

Text by NewSphere 編集部