女性の「性的欲求低下障害」治療薬の開発へ 製薬各社が熾烈な競争

 29日、アメリカのニュージャージを拠点とするS1バイオファーマ社が、新薬ロレキシーの臨床実験を開始しており、その詳細を発表する事をフィナンシャル・タイムズ紙が報じている。

 この新薬は女性の性的欲求低下障害(HSDD)の治療薬として、2つの抗鬱剤を組み合わせたもので、性的興奮と抑制の脳内化学物質を調整するものと伝えられている。S1バイオファーマ社は初のHSDD治療薬承認をめぐって競合しているバイオテクノロジー会社のひとつ。

 フィナンシャル・タイムズ紙は、「ロレキシーは疾患に苦しむ人にとって初の安全で効果的な治療の選択肢となるだろう」という同社社長のコメントを紹介している。

【各社の開発】
 アメリカ食品医薬品局(FDA)は女性の性的欲求低下障害に関する治療を承認していないが、今後数年間は申請が予想される事をフィナンシャル・タイムズ紙は報じている。

 初めて出願されたのはドイツのベーリンガーインゲルハイム社のフリバンセリン。2010年、効果が副作用を上回っていないという理由で承認を却下されている。却下後、ベーリンガーインゲルハイム社は、権利をスプラウトファーマスーティカルズ社(ノースカロライナ)に売却、同社は臨床実験を重ね、近頃FDAへ再申請した。

 さらに、エモーショナルブレイン社(ネザーランド・ニューヨーク)が2つのHSDD治療薬を開発しており、パラタンテクノロジーズ社(ニュージャージー)も女性の性機能障害の臨床実験を行っているという。

 なお、これらの新薬には、時に「女性用バイアグラ」や「ピンクバイアグラ」と表現されるが、開発者たちは、全く違った用法である為、これらの表現は誤解を招くものとしている。

【2017年、販売承認なるか】
 S1バイオファーマ社の医務部長ロバート・パイク氏によると、HSDD治療の為のロレキシー投与は、一生続けなくてはならないわけではなく、6ヶ月の投与で完治するという。なお同氏によると、米国では10%の女性が、悩みや人間関係の問題により、性的欲求低下障害(HSDD)の基準に合致していると診断されているという。

 同社は、30人の女性による臨床実験の結果を、2014年の第1四半期に出せるものとしている。より大規模な臨床実験の後、すべて順調であれば、2017年にアメリカ食品医薬品局(FDA)へ販売承認を申請する予定のようだ。

Text by NewSphere 編集部