スノーデンめぐる米ロの駆け引き 米紙は「放置も悪くない」と主張

 米諜報暴露事件で逃亡中のエドワード・スノーデン氏は12日、滞在中のモスクワ・シェレメチェボ空港に人権活動家やロシア議員らを集め、エクアドル亡命への協力を要請した。また、亡命成功までロシアに一時亡命申請を出す意向を明らかにした。
 スノーデン氏は20ヶ国ほどに亡命申請を出しているが、軒並み米国の圧力により妨害されていた。エクアドルは、スノーデン氏がエクアドル領に到達できるなら亡命を受け入れると表明している。

【ロシアの協力集めるスノーデン氏】
 スノーデン氏は香港脱出後、6月23日から同空港で立ち往生している。
 しかし、会談の参加者によると、その割には健康そうであり、ロシア側の警備も付けられている様子だと報じられている。ロシアは表向き、本件に関して中立を宣言しており、米国との関係を損なうことは望まないとしている。

 スノーデン氏はすでにロシアへも亡命申請を出しているが、その際は「米国に害となる暴露活動をやめる」というロシア側の条件に折り合わなかったと報じられている。
 一方でスノーデン氏は、害をなしているのではなく米国民のためになることをしているのであって、「自らを遵法市民であり愛国者だと見ていると言っている」と伝えられている。

 会談参加者のオルガ・コスティナ氏は「彼が公表を望んだことはすでに公表されています」として、暴露活動中止は厳しい条件ではないと述べた。
 同じくアナトリー・クチェレーナ氏は、「おそらく2~3週間で」ロシア亡命申請が認められるのではないかと述べた。
 またヴャチェスラフ・ニコノフ議員は「ロシアを裏切った人が米国や他の西側諸国から引き渡されたことは、過去一度もありません」と、米国のダブルスタンダードを批判している。
 各紙は、ロシア政府自身の言論封殺姿勢も指摘している。米国にはロシアからの逃亡者も存在し、匿われている。

【ひんしゅくを買う米国】
 一方米国は、スノーデン氏が人権活動家でも内部告発者でもなく、犯罪者だとの見方を繰返し強調しており、会談に向かう参加者にも接触して、こうした米国の立場を伝えるよう依頼したと報じられている。
 ホワイトハウスのカーニー報道官は、身柄引き渡しには「絶対的な法的正当性」があると述べ、ロシア政府は「プロパガンダのプラットフォームを提供している」、人権団体に「モスクワのトランジットラウンジだけでなくロシア全体で」仕事をさせるべきだ、などと批判している。
 オバマ米大統領は同日、プーチン露大統領と電話会談したが、特に進展はなかった模様だ。

 また各紙は、先週、ボリビアのモラレス大統領を乗せた飛行機が、スノーデン氏が乗っている疑いからヨーロッパ諸国に領空通過を拒否されたことで、南米諸国などの反米感情が一層高まったとも指摘している。フィナンシャル・タイムズ紙は、米国のブラジルでの諜報活動が暴露されたことも報じている。

 なおウォール・ストリート・ジャーナル紙は、皮肉にも、スノーデン氏にとってみればロシアに居ても言論の自由は怪しい一方、米国内の世論はスノーデン氏を内部告発者として認める方向にあるため、オバマ政権としてはスノーデン氏をモスクワに放置しておくのも悪くないのではないか、と論じている。

Text by NewSphere 編集部