ポルトガル、緊縮財政めぐり政治混乱 今後の見通しは?

 経済危機に苦しむポルトガルで、2人の重要閣僚が相次ぎ辞意を表明した。
 1日には、ガスパル財務相が、自らが進めてきた緊縮策の目標を達成できなかったことなどを理由に辞任。コエリョ首相は後任にアルブケルケ国庫担当相を指名した。
 さらにポルタス外相が、この後任人事は緊縮路線の継続を明示するとして、2日に辞意を表明した。ポルタス外相は、連立与党を構成する民衆党党首である。もし連立が解消されれば、コエリョ首相率いる社会民主党は少数与党に転落し、政治の混乱を招くおそれがある。
 コエリョ首相は2日のテレビ演説で、「外相の辞任を認めない」と表明。民衆党との連立続行に向け協議し、政治の安定を目指すと述べた。
 緊縮策に反対する最大野党・社会党は、選挙の前倒しを要求した。
 金融市場では10年債利回りが約0.30%跳ね上がり、6.72%となった。
 海外各紙は、緊縮策を推進するコエリョ政権の立場の危うさを案じた。

【連立政権崩壊の危機】
 ポルタス氏はこれまでも、緊縮路線を進めるコエリョ首相及びガスパル氏と度々対立してきた。辞表の中で「閣僚入れ替えは別の政治・経済サイクルへの機会とすべきだった」と述べ、強硬な緊縮策を捨てるべきだと念を押した。
 ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、コエリョ政権の運命はポルタス氏の手中にあると報じた。同紙はまた、「連立続行はあり得ず、早期選挙となるだろう」というリスボン大学教授の見解を掲載した。
 世論調査によると、野党・社会党の支持率と、社会民主党と民衆党を合算した支持率はほぼ同じだとBBCは報じた。

【EU閣僚とポルトガル国民の見解の違い】
 ポルトガルは2年前に財政危機に陥り、欧州連合(EU)等から780億ユーロの支援を受けている。その金融支援と引き換えにコエリョ政権は緊縮策を推進し、EU閣僚らからは一定の支持を得てきた。緊縮策に尽力してきたガスパル氏を賞賛してきたEU閣僚らは、今回の財務相の後任人事を歓迎しているという。
 一方、失業率が過去最高の約18%に達するなど、ポルトガルは深刻な不況に陥っており、緊縮策の撤廃・政権打倒を求める国民デモが頻発している。
 「政治的に言って、ポルトガルの財政調整プログラムは崩壊している」という公的債務アナリストの見解を海外各紙は掲載した。

 フィナンシャル・タイムズ紙は、政治・経済的圧力は、政府が2014年予算案を策定し地方選挙が行われる9月に顕在化されるだろうと報じた。

Text by NewSphere 編集部