オバマ大統領、パレスチナ問題解決に意欲

 未だ解決の兆しが見えないパレスチナ問題を解決へと導くべく、中東和平の交渉再開に向けて、ケリー米国務長官がヨルダンやエルサレムを訪問し、当局者らとの対談を行なっている。これまでは、交渉開始に明確な期限は設けてこなかったケリー氏だが、ここにきて9月の国連総会までに成果を出したいと意気込みを見せ始めている。
 海外各紙は、パレスチナとイスラエル双方の様子とともに、米国の動きを報じている。

【交渉再開へ、両者には微妙に温度差】
 イスラエル政府は、フィナンシャル・タイムズ紙の取材に対して「ケリー氏と共に、パレスチナとの直接交渉の実現に向けて準備を進めている」と語り、前向きな意向を示している。ネタニヤフ首相は「両国は前提条件のない状況で交渉をするべき」と主張しており、歩み寄りの必要性を十分に理解しているようだ。
 イスラエルのハアレツ紙では、関係者筋からの情報として、同首相が、交渉成立の暁にはヨルダン川西岸の入植地の大部分から撤退するつもりでいると考えていることを取り上げている。
 また、首相にとっての重要ポイントは安全性の確保であり、2つの要素にまとめられるという。まずは、イスラエルの一部として入植地を保持すること。そして、パレスチナ地域の非武装化で、治安が安定した後もヨルダン渓谷などに国防軍を配置することだ。

 和平交渉に積極的なネタニヤフ首相の意向を反映してか、イスラエルでは交渉再開を後押しするような報道が続いているようだとニューヨーク・タイムズ紙は注目している。
 最近の報道では、「イスラエルの刑務所に拘束されている120人のパレスチナ人を、断食月が始まる7月8日に釈放する」、「 米国のお膳立ての下で、両国の代表がヨルダンの首都アンマンで会合を行う」といった記事や、「パレスチナ暫定自治政府のアッバス議長が交渉再開の条件として提示している国連停戦決議に基づく国境・1967年ラインの受け入れを取り下げた」という内容の報道がされているという。
 なおアンマンでの会合については米国が、アッバス議長の動向に関してはパレスチナ政府がそれぞれ否定している。

 アッバス議長は依然として、「1967年ライン」と入植地建設の停止を前提条件として提示している。
 さらに、最近では権限対立をめぐり就任したばかりの首相が辞任しており、不安定な内政が交渉再開への支障となることが懸念されている。
 またイスラエルでも、ネタニヤフ首相は和平交渉のために入植地の人々を見捨てるのかとの批判が右派から挙がっており、交渉が再開したとしても一筋縄では行かなそうだ。

【国連総会までに結果をだせるのか】
 オバマ米大統領の意向を受けて中東和平を進展させたいケリー氏は、交渉再開に時間を費やすことで障害が生じかねないとして、9月の国連総会を一つの目標として掲げ、それまでの進展を目指す見込みだと各紙は報じている。
 アナリストらからは、交渉再開は小さな1歩に過ぎず、現時点での決定的な解決は無理があると言われている。とはいえケリー氏は、アッバス議長もネタニヤフ首相も優れた政治家であり、何が有益であるかは理解しているはずだとして、交渉再開へ望みを託している。

Text by NewSphere 編集部