米国、思わぬミスか?内部告発者スノーデン氏、エクアドル亡命へ

 米国家安全保障局の請負業者の元従業員で、政府による大量電話盗聴やインターネット監視を告発し逃亡中のエドワード・スノーデン氏は23日、滞在していた香港を出て、空路モスクワへ移動した。
 スノーデン氏は、ビザが不要な空港のトランジットゾーン内におり、亡命予定先と見られるエクアドルの外交官と面会したと報じられている。スノーデン氏の逃亡は機密公開活動団体ウィキリークスが支援しており、ロンドンのエクアドル大使館内に亡命中の創設者ジュリアン・アサンジ氏が、エクアドルとの仲介を手配したと自ら認めている。またエクアドルのパティーニョ外相も、スノーデン氏の亡命申請を受理したと述べている。
 ロシアのインタファクス通信は、エクアドルへの直行便がないため、スノーデン氏は同日中にキューバ経由でエクアドルに出発すると発表しているが、偽装との見方もある。

【スパイ扱いこそが失敗か】
 米国は15日、香港に仮逮捕を要求していたが、訴追内容が不十分であるとして、香港は米国に追加情報を要求していた。米国がこれに対応しようとする間、スノーデン氏は出発前日ごろ危険を感じて、即座に香港を去ったようである。
 米国務省は22日にスノーデン氏のパスポートを取り消したが、香港当局への伝達が間に合ったかどうかは不明である。米国議員らは、スノーデン氏を逃がしたと香港および中国当局を非難したが、香港当局は、氏の出国を妨げる法的根拠がなかったと反論している。各紙は、なぜもっと早くパスポートを取り消さなかったのか、疑問を呈している。

 また各紙は、国際刑事警察機構インターポールに指名手配を求めることもできたと指摘しているが、米当局は、それは対象者が所在不明の場合に初めて意味があると述べている。
 さらにインターポールの規定では、軍事、政治、人種、宗教に関わる問題、すなわち政治犯に関しては、引き渡し対象外となっている。このためウォール・ストリート・ジャーナル紙は、米当局がスノーデン氏に米国資産の窃盗およびスパイの両容疑をかけてしまったのは作戦ミスであり、窃盗容疑だけにしておけば香港で逮捕できたとの、専門家の意見を伝えている。

【面目を失う米国、各国との軋轢】
 米政府は、スノーデン氏が通過する可能性のある諸国に、総当り的に、重罪容疑者であるから「これ以上のいかなる国際的旅行も認められるべきではない」との通達を回している。ただし、ニューヨーク・タイムズ紙によれば、エクアドルやキューバを含む南米諸国からは、高圧的だとして反感を買っているという。
 もともと人権問題やサイバーセキュリティ問題で対立のあった中国やロシアからも、米国のダブルスタンダードだと非難されており、スノーデン氏は歓迎されているようである。
 ロシアは公式には事件への関心を否定しているが、スノーデン氏のモスクワ到着時、同乗の乗客によると、通常の乗客通路ではなく階段で滑走路へ降りる珍しい方式が採られ、また黒塗りの自動車などが送迎に現れたのが目撃されている。

 一方、リンジー・グラハム米上院議員は、「自由への逃亡が中国、ロシア、キューバ、ベネズエラであろうはずはありません」などと皮肉っている。ダイアン・ファインスタイン上院諜報委員長も、「彼は留まって非難に立ち向かうこともできました。逃亡が高貴な思考だとは思いません」と、スノーデン氏の行為を認めず徹底抗戦の構えである。

Text by NewSphere 編集部