タリバン和平交渉に暗雲?その背景とは

 アフガニスタンのカルザイ大統領は19日、反政府武装勢力タリバンとの和平交渉に参加しない意向を表明した。タリバンは18日、カタールの首都ドーハに連絡事務所を開設し、米国・アフガニスタン政府との和平交渉へ踏み出すと表明していた。
 海外紙は、アフガニスタン政府の反発の理由と今後の影響について報じている。
 
【タリバン事務所にカルザイ大統領 激怒?】
 ドーハにあるタリバン事務所には、タリバンがアフガン統治時代から使っていた「アフガニスタン・イスラム首長国」の名称やその旗を掲げられていたという。タリバンは、この事務所を国際社会や国連の代表者と交流する場所で使うつもりだと語り、「世界中の国との関係を改善する」と述べ、思い出したかのように「必要ならアフガニスタン人にも」と加えたとニューヨーク・タイムズ紙は報じている。
 フィナンシャル・タイムズ紙は、カタールの事務次官立会いも含めた豪華なセレモニーや声明は、「現政府と同レベルにタリバンを置こうとするよう意図」され、タリバンを正当な政府とみなしているようだと指摘している。

 カルザイ大統領は、タリバンのこうした「スタンドプレー」に反発。これについてアフガン政府当局者は、米国がタリバンに公式な立場を与えないとする保証を破ったと指摘した。さらに、米国とタリバンによる和平交渉プロセスの「蚊帳の外」におかれたことも批判しているとニューヨーク・タイムズ紙は報じている。

 一方ケリー米国務長官は、「タリバンの旗やシンボルは下ろすようにカタール政府に急き立てた」とアフガニスタン当局に伝えたとニューヨーク・タイムズ紙は伝えている。

【アフガンへの治安権限移譲が和平交渉に影響か】
 アフガニスタン政府は18日、米軍主体の国際治安支援部隊から国内全土の治安権限を引き継いだ。これにより、カルザイ政権とタリバンとのパワーバランスに変化が及ぶことは想像に難くない。翌日にタリバンから和平交渉の意思が表明されたことは、タイミングを見計らったかのようだ。
 アナリストは、アフガニスタン治安部隊の増強を考慮すると、国際部隊の撤退後、内戦に突入する可能性があるため、タリバン穏健層は和平交渉を熱望していると分析している。
 他方、米政府は、国際部隊が撤退した後、反乱の抑制に役立つタリバンとの和平交渉に入ることや、同国と2014年以降も駐留米軍受け入れの合意を得たいという思惑があるようだとニューヨーク・タイムズ紙は報じている。

 米政府は、和平プロセスをアフガニスタン政府とタリバン間で進めることを望むのに対して、タリバンは、米国との直接対話を望んでいるようだ。他方カルザイ政権は、これ以上米国の影響をうけたくないと考えているため、和平交渉をめぐって三つ巴の主導権争いが予想されるという。

Text by NewSphere 編集部