ハメネイ師の影響が強いイラン大統領選、無事に投開票されるのか?

 6月14日に大統領選を控えたイランでは、政府当局が厳しい取り締まりの動きをみせているようだ。
 最近では、政府系日刊紙に対して異例の発禁処分が下されたり、候補者のロウハニ氏の選挙スタッフの拘束が行われたりした。
 海外各紙は、前回の大統領選の際にも行われた弾圧を彷彿させる動きと共に、最高指導者ハメネイ師の色が強すぎるため盛り上がりに欠けるとも言われる選挙に向けた同国の様子を報じている。

【政府による政局コントロールの一端か】
 イランの裁判所は、政府系日刊紙「イラン」に対して6カ月間の発禁処分を命じた。同紙が誤報を伝えたことが原因と言われているが、その詳細は明らかではないとフィナンシャル・タイムズ紙は報じている。
 アフマディネジャド大統領の影響下にあるイラン紙が、同氏の政策などを過度に好意的に伝えたためとも言われているようだ。
 大統領2期目となる同氏は今回の選挙には立候補できず、側近のムシャイ元大統領府長官は失格となっていることから、ハメネイ師の支持を失っているとも伝えられている。
 民間メディアが閉鎖されることは珍しくないものの、政府系媒体に対する処分は異例だという。

 8名に絞られた候補者のうち、最も改革思考であるとされているロウハニ師は、国民に対し、投票によって国に変化をもたらすことを訴えている。
 インディペンデント紙(英)は、同師が演説の中で、「国民はより大きな平和、自由、繁栄、敬意、安全を得る権利がある。それには一人一人の存在(投票)が必要であり、彼ら(政府)に阻止されてはならない」と訴えたことを取り上げている。
 しかし、テヘランで開かれた集会で、参加者の一部が、改革派で自宅軟禁中であるムサビ元首相の解放を求めるスローガンを叫んだことなどが、イスラム革命体制に反するとされ、選挙スタッフらが治安当局に拘束されたという。
イラン政府は、改革派に対して容赦のない姿勢を見せており、警察当局も候補者らに対して改革派と関わりを持たないようにと忠告しているようだ。

【候補者が出揃うも、誰になっても同じ?】
 護憲評議会やハメネイ師によって承認された8名の候補者は、テレビ番組で初の討論会を行った。彼らは次々とアフマディネジャド大統領の政策に対する批判を行い、経済成長や外交に焦点をあてた政策の必要性を訴えたとウォール・ストリート・ジャーナル紙は報じている。
 具体的な問題点としては、国家保安部が経済の主権を握っているために民営化が遅れている点や、国内産業の低迷、経済制裁の影響、300万人にものぼる失業者対策などが挙げられた。
 必要な政策としては、石油収入に頼らない経済成長、民営化、国内産業の強化、インフレ抑制、国民と政府間の信頼関係の構築などが挙げられたという。
 イラン国民にとっては日々痛感していることではあったが、政府関係者がこれらを正面から取り上げて討論することは稀であるという。ごまかしきれない経済状況について、真剣に取り組む姿勢をアピールしているようだ。

 ただ、同紙はまた、誰が当選したところで、最終的な政策はハメネイ師が決定権を持っていると指摘。さらに、同師に近いとされている候補者はいずれもさほど人気があるわけではなく、全国的な知名度は高くないという。
 こうした事情からか、世論調査では50%以上が誰に投票するかを決めかねていると答えており、盛り上がりに欠けているようだ。

Text by NewSphere 編集部