なぜスウェーデンで大規模暴動が起きたのか?

 スウェーデンの首都ストックホルム北部のヒュースビー地区で、19日から連夜暴動が発生した。同地区は、人口の約8割が移民で、人種差別や高い失業率への不満が暴動拡大の背景と指摘されている。
 暴動の発端は、ナイフを振り回していた69歳のポルトガル男性を警官が射殺した事件とみられる。警官は人種差別的な言葉を発したとされている。
 海外各紙は、スウェーデンの「寛容な移民政策」の裏にある実態を指摘した。

【「寛容政策」のひずみ】
 スウェーデンは、「手厚い社会保障」「低い失業率」で評判がある。しかし、経済協力開発機構(OECD)加盟国の中で、格差が最も急速に拡大しており、移民の失業率は同国生まれの国民の3倍に達するという。
 同国は70年代、ストックホルム郊外で、移民政策・都市計画のモデルとして住宅プロジェクトを進めた。しかし、そうしたアパートメントは改装が必要で、費用も高額になっているとウォール・ストリート・ジャーナル紙は指摘。さらに、「失業給付と福祉の手当が生活費に追いついていない」という統計学者の見解も掲載している。
 一方、授業料無料にもかかわらず、ヒュースビー地区では25%以上の住民が高等教育を終えていないことをブルームバーグは指摘。「問題は、若者が必要なコンピテンシー(職務の適確性)を持っていないこと」という専門家のコメントを掲載した。

【疑問視される労働市場の構造】
 ラインフェルト首相は先週、「失業率の上昇と社会的課題が今厳しくなっている」と認めたとウォール・ストリート・ジャーナル紙は報じた。
 同国の雇用保護法では、会社は解雇が必要な場合、勤続期間が短い者から解雇しなければならない。
 ボルグ財務相は23日、その法を変える予定はないとした上で、「労組が低賃金を受け入れるなら、若者を雇用する企業に助成金を補助して若者の失業を減らしたい」と語ったとブルームバーグは報じた。

【高まる「反移民」の声】
 政界では「反移民」を唱えるスウェーデン民主党が躍進している。今月公表された世論調査によると、現政権支持率40.8%に対し、9.9%の支持を獲得したという。
 トビアス・ビルストルム移民大臣は2月、「現在の移民レベルは持続不可能だ」と述べたとガーディアンは報じた。
 同紙は、現政権はこれまでの社会政策を取り消すのではなく、今回の暴動がどのように拡大したかを注意して読み取る必要があると提言した。

Text by NewSphere 編集部