「一騎打ち」のイラン大統領選迫る 勝つのは保守派か、改革派か?

 6月14日に行われるイラン大統領選の立候補者受付が締め切られ、23日までに、最高指導者ハメネイ師らによる護憲評議会が承認を行うこととなった。評議会では、立候補者がイスラム教シーア派の理念に忠実であるかを基準に出馬資格を審査し、絞り込んでいくという。
 選挙戦は、核交渉責任者のジャリリ最高安全保障委員会事務局長(47)を最有力とした上で、ハメネイ師寄りの保守強硬派内での争いになる様子だった。しかし、締め切り直前、アハマディネジャド大統領の側近であるモシャイ元大統領府長官(52)や、保守穏健派で改革派のラフサンジャニ元大統領(78)などが出馬を表明。最高指導者との確執を抱える有力対抗馬の出現が注目を浴びた。
 海外各紙は3者を中心に揺れ動く選挙の予想を伝えている。

【政界からの非難が相次ぐ2者の相異点】
 モシャイ氏とラフサンジャニ氏の立候補は大きな波紋をよんでいるようだ。特に、モシャイ氏は非主流のイスラム教シーア派の推進を企んでいるとの噂もある。出馬が決定した場合、警察署長などが「手段は選ばない」として暴力的な行為にも及びかねないことを示唆しているとニューヨーク・タイムズ紙は報じている。
 アハマディネジャド大統領が堂々と支持を公言していることも、同国では違反とされる可能性が高く、評議会による承認を得られないのではとの見解が強いようだ。

 また、「権力にしがみつこうとしている」とも非難されている、ラフサンジャニ元大統領に対する政界からの反発も強い。
 しかし、核開発に対する欧米からの経済制裁で国民が苦しむなか、欧米との関係改善に前向きで、経済に強い同氏の支持率が上がっているようだ。
 特に、民主化を要求している草の根運動「緑色の運動」の支持者らを中心に、多くの票が期待されているとガーディアン紙は分析している。
 同氏は「政治は国民のものであり、指導者を選ぶ権利は国民にある」と訴え、国内外での問題可決に務めることに意欲的な姿勢をみせているという。人権活動家らは「イランの変革に少しでも望みがあるとすれば、それはラフサンジャニ氏にしか実現できない」とし、衰退していた改革派の勢いが増す可能性に期待している模様だ。

【欧米諸国に毅然とした態度のジャリリ氏】
 今回の選挙で最有力者とされているジャリリ氏は、欧米諸国からの(不当な)圧力には屈さない、とフィナンシャル・タイムズ紙の取材に対して語っている。
 実際、トルコで今月行われた欧米6ヶ国との会合でも、同氏は強気の姿勢を崩さず、進展のないまま次回に繰越となっている。
 同氏は、イランは核拡散防止条約(NPT)に署名し、国際原子力機関(IAEA)の枠組み内で、平和的目的のために核開発を行なっていることを諸外国は受け入れるべきだとの断固たる主張を譲らずにいる。
 歩み寄りのない話し合いは欧米諸国を苛立たせてはいるものの、珍しく身が潔白なベテラン政治家であることは高く評価されているとフィナンシャル・タイムズ紙は報じている。

 大統領の交代は8年ぶりとなる。核開発と欧米関係に対する見解が相反する、ラフサンジャニ氏とジャリリ氏の一騎打ちとなりそうだ。方向性が異なる2人の候補者に、イランの行く末がかかっているといえる。

Text by NewSphere 編集部