フィリピン公船、台湾漁師を射殺 中国が重大な関心を示す理由とは?

 フィリピン沿岸警備隊は9日、南シナ海の係争海域にて、台湾漁船に発砲。船員1人が銃撃を受け、死亡した。
 台湾外交部(外務省)は12日、フィリピンに正式な謝罪と賠償、関係者への処罰、台比間の漁業協議着手を求め、「72時間以内に回答がない場合は、フィリピンからの労働申請を凍結し、駐比代表(大使)召還などの制裁措置をとる」と発表した。

 これを受けて、中国外交部報道官は、「蛮行だ」とフィリピンを強く非難。「中国側はフィリピンに対し即刻調査を行い、早期に説明するよう求めている」「死亡した台湾同胞に深い哀悼の意を表す」などと述べた。
 海外各紙は、これを受け、ほかの海域の領有権論争が激化する可能性を報じている。

【南シナ海問題に飛び火か?】
 中国とフィリピンは、南シナ海の島の領有権をめぐって対立している。中国は係争地域を実効支配する一方、フィリピンは国際海洋法裁判所に仲裁を提起していた。
 これを受け、中国は台湾とともに、フィリピンに対する共通の利害をつくろうとしているとフィナンシャル・タイムズ紙は報じた。
 一方、人民日報傘下のグローバル・タイムズ紙は、この問題で中国と台湾の協力を求める声に釘を刺した。「そのような協力は、特に軍と政治において、米国や日本がアジア太平洋地域における権力の移行の兆候ととらえ、望ましくない注目を集める」という専門家の見解を同紙は掲載している。

【サイバー空間では】
 フィリピンの沿岸警備隊は事件翌日の10日、「正当な対応だった」と主張し、「気の毒だが、謝罪には相当しない」と述べていた。
 このコメントに怒った台湾のハッカーがフィリピン当局のサイトを攻撃し、一時麻痺する事態となった。

Text by NewSphere 編集部