バングラデシュのビル崩壊 誰の責任か?
24日、バングラデシュのダッカ郊外サバールで、衣料5工場などが入居する8階建てビル「ラナ・プラザ」が崩壊、少なくとも200人以上の死者が報告されている。崩壊時には数千人がビル内におり、なおも生存者がいる見込みで、現在も救出活動や献血呼びかけなどが続いている。
バングラデシュでは他にも工場火災などによる死亡事故が頻発しており、各紙はその背景を憂慮している。
【建築基準】
当局によれば、「ラナ・プラザ」ビルは、バングラデシュに多い低湿地から水を抜き、コンクリート基礎を充填して建設されたもので、元来不安定な構造であるという。当局は建築許可を出していなかったと報じられている。
地元議員でもあり、他にも同様の工場を所有するオーナーのソヘル・ラナ氏は、それらの工場を地元議会や市長の「許可」を得て建設したと主張するが、当局によれば、市長にそのような許認可権限はないという。一方、市長は、当局の許可発行が遅過ぎるため、好況時の工場建設ラッシュにおいては間に合わないと主張している。
【避難不許可】
ビルの崩壊が起きた朝には、外壁に大きな亀裂が発生しており、工場労働者らは一時避難していたという。ビル内の銀行は重要書類を搬出し閉鎖されたが、工場労働者らは「従わないと減給を脅されて」、作業復帰を強いられたという。
アナリストらは、欧米の納品先企業の厳しい納期に合わせるため、工場長たちが操業続行を強行したと考えている。
またオーナーのラナ氏は同日、会議の席上で、ラナ・プラザが「あと100年はもつ」と豪語していたと報じられている。
【把握の限界】
欧米各企業は事故に哀悼の意を表し、納品業者が職場の安全基準を満たすよう要求するなど雇用倫理を重視していたと語るが、監査はビル自体の安全性にまでは及んでいなかった。
また、崩壊現場から書類やラベルが発見されても、ラナ・プラザ内の工場と契約してはいないと主張する会社もある。これについては、日常的に「ヤミ下請け」が横行していたバングラデシュの現状を指摘する声もある。
【政界の癒着】
バングラデシュは中国に次ぐ、世界第2の衣料輸出国である。衣料産業はバングラデシュ経済の主力であり、国会議員の1割以上が衣料工場を所有するなど、業界と政界とのつながりも深い。
バングラデシュの強みは最低賃金月37ドル前後というコストの安さである。それを守るため労働者の賃金は安く抑えられ、規制の強化は議会に阻止され、規制があっても適切に執行されず、建物の安全対策費などもおろそかにされていたという。
なお労働組合は事実上無きに等しく、昨年には労働運動のリーダーが暗殺され、現在も犯人は捕まっていない。