ハッカー集団「ラルズセック」リーダー逮捕 その影響は?

 オーストラリア連邦警察は、ハッカー集団ラルズセック(LulzSec)のリーダー格とされる24歳の男性を逮捕した。
 ラルズセックは、世界最大のハッカー集団アノニマスから枝分かれした集団といわれており、政府や大手企業などに対する攻撃を行なっている。その名前はネット用語で「爆笑」という意味の「Lulz(またはlols)」と「Security」の「Sec」を合わせ、「爆笑セキュリティ」を意味しているという。アノニマス、ラルズセック両者とも政府や企業などの機密情報を公開するウェブサイトWikiLeaksを支持しており、2010年に同サイトを閉鎖する動きが世界中で起こった際には、報復行為として政府系機関へ様々なサイバー攻撃を仕掛けたことで有名となっている。
 海外各紙は今回の逮捕の詳細を報じている。

【オーストラリアでは初の検挙】
 「Aush0k(一部報道ではOzShock)」を名乗る男性はIT系企業に務めており、政府を含む顧客データへのアクセス権を利用して、政府系ウェブサイトへ不正行為を行った容疑がかけられている。現在は保釈中で来月には裁判所へ出廷する予定だとフィナンシャル・タイムズ紙は報じている。CIAなどのサイトへの不正なデータ改変による障害発生の容疑2件と、制限のあるデータへの不正アクセスの容疑1件で、最大10~12年の懲役となるという。

 英テレグラフ紙などによると、ラルズセックはCIAの他、ソニーピクチャーズや任天堂、英新聞The Sunなどのハッキングも行なってきており、オーストラリア内では多くの政府系機関や大学のサイトが被害にあっているという。2011年だけでも、少なくとも10件以上の政府系サイトが閉鎖されていたようだ。
 最近では、米国で活動するリーダー格「Sabu」(本名Hector Xavier Monsegur)が逮捕され、その司法取引の一環としてFBI調査に協力していることから、多くのアノニマス、ラルズセック関係者が検挙されている。オーストラリアでの逮捕は初。同国の警察はハッカーたちに向かって「無害な娯楽ではない。深刻な問題だ」と訴えているとフィナンシャル・タイムズ紙は取り上げている。

【逮捕が続くも、実態の把握は困難】
 社会的な脅威だとされているハッカー集団ではあるが、彼らは金銭上の利益を追い求める主流ハッカーとは異なる、「思想主義者」であるとニューヨーク・タイムズ紙は指摘している。思想的動機を基にしたネット上の集団だけに、「ラルズセック」という固有名詞はあっても、その活動や人数は把握しにくい。
 リーダー格と言われる人物を数名逮捕したところで、ハッキング自体がなくなる可能性は低く、報復攻撃も行われるのでは、との声も挙がっている。

 なお、最近の相次ぐラルズセックメンバーの逮捕は、一部のネットニュースを騒がせていたようだが、アノニマスは複数のサイトに「アノニマスはラルズセック以前から存在し、そして今後も存在し続ける」という声明を出していると報じられている。

Text by NewSphere 編集部