テキサス工場火災 海外紙が報じる、凄惨な現場

 ボストン・マラソン爆弾テロ事件で不安が増すアメリカを、また悲劇が襲った。
 17日夜、テキサス州ウェーコで発生した化学肥料工場で爆発事故が発生。現地警察は、15人が死亡、160人以上が負傷したと伝えた。未だ捜査関係者以外は現場に近づけず、事故原因は不明のままだ。
 オバマ大統領はボストン爆弾テロ発生時と同様、緊急声明を発表し、政府機関関係者との連携による速やかな調査を約束した。
 FBIは、現時点で「犯罪の可能性は少ない」と述べたが、学校や老人ホームに囲まれた人口2400人の田舎町が、不安から解放される日はしばらく訪れそうにない。
 海外各紙は、現地の状況や背景について報じている。

【現場の状況】
 ニューヨーク・タイムズ紙などの報道によると、工場で火災が発生した約20分後、大きな爆発音と、赤い炎とマッシュルームのような煙、そして揺れが起こったという。
 工場付近では、破片やがれきが直撃し、壁や屋根が吹き飛ばされ、完全崩壊した住宅もある。さらに、近郊では、網戸が窓を突き破ったという住宅もあり、被害は広範囲に及んだようだ。爆発の揺れがマグニチュード2.1相当に認定された事からも、その衝撃の大きさが伺える。

 火災から人々を避難させようとした多数の消防員やボランティアの人々も、行方不明になっている。警察は現段階で生存者の捜索に全力を挙げるとし、政府各機関協力による警察犬や爆発物調査団、化学調査団の派遣を受け入れるとしている。しかし、化学という「見えない恐怖」が、風向きにより街を覆う可能性も否定できない。

【企業の状況】
 工場を経営するウエスト・ファーティライザー社は、無水アンモニアや硝酸アンモニウム(栽培改良の為土壌に蒔かれる)を取り扱う肥料会社だ。前者は、安定性はあるものの、人体の腐食を招き、発火性の環境で引火しやすく、普段は液状化で、後者は粒子型で保管されている(オクラホマでのテロ事件でも同じ方法で使われた)。同社は2種類合計65万ポンドもの量を保持していたとみられる。

 同社は2006年、リスクマネージメント関連の書類未提出等に対し、罰金を数回支払っている。さらに、アンモニア臭や埃に対し、近隣住民からは苦情が寄せられていた。
 ただし同社への最後の公的調査は28年前で、「爆発物を作成しておらず、リスクもない」とされていたようだ。
 ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、同社はよくある「化学薬品を保管した肥料会社の一つ」で、同じような会社は、過去に他社で同様の事故があっても、近隣からの苦情がない限り、調査されることはないと報じている。カルフォルニア州などに比べ、建築規制が緩いテキサス州では、工場の周りに住宅エリアがある事も多く、現地住民も事故を懸念してはいなかったのではないかと報じられている。

 大統領や議員宛てに猛毒のリシン入り封筒が送られる事件が起きたこともあり、他の薬品と混ざって爆発物に変わる危険がある物質を保管する工場を利用したテロ事件を、懸念する声もあるという。

Text by NewSphere 編集部