人権問題で冷え込む米ロ関係、出口はあるのか

 ロシアは13日、米国の現・元政府関係者18人を入国禁止とした。
 うち4人は、ブッシュ前政権下でキューバ・グアンタナモ収容所における「拷問の合法化」に関与したという、法務スタッフや現地司令官だ。14人は、武器や麻薬の密売でロシア人被告を裁いた裁判官など、「在外ロシア市民の人権と自由を侵害している」人物だという。15日にモスクワでロシア外相と会談予定だった国家安全保障顧問、トム・ドニロン氏までもが含まれている。

【発端は、マグニツキー法】
 2009年、ロシア当局による2.3億ドルの横領を告発していた弁護士、マグニツキー氏が、逮捕・拷問され獄死した。以来、米国はロシアを非難し、ロシアのプーチン大統領も、米国は反プーチン運動を扇動しているなどと反発していた。
 昨年には米国で、事件に関与を疑われるロシア人の入国禁止や資産凍結を定めた通称「マグニツキー法」が成立。これに対してもロシアは、米国人のロシア人孤児との養子縁組を禁じる報復を打ち出していた。
 そして12日、米国が同法に基づき、ロシア人18人の入国禁止・資産凍結を発表した結果、今回再びロシアの報復として、同数の米国人の入国拒否に至ったと報じられている。

【両国の反応】
 また、機密扱いであるが、別の米国のブラックリストにも、親プーチン派のチェチェン指導者、ラムザン・A・カディロフ氏らが掲載されていると報じられた。
 カディロフ氏は、米国から危険視されることは誇らしいことであり、リストに載っていなくとも米国になど行きたくないと語っているという。
 一方、ロシアのリストに載ったジョン・ヨー氏も、ロシアに行ったことも行く予定もないが、「妻のために黒海の別荘でも持ちましょうかね」などと、皮肉を語っているという。

 ロシア外務省は、ブラックリスト合戦は望まないとしながらも、「ワシントンの政治家たちはいい加減に、ロシアのような国との関係を教育的指導や絶対的命令の精神で構築しようとしても無駄だということに、気づいても良い頃である」などと声明した。
 これに対し、米国国務省の匿名スポークスマンも、「ロシアの正しい反応というものは、報復の報復に従事するよりも適切な調査を実施し、彼(マグニツキー氏)の死に責任ある人々の責任を保ち続けること」などと語っている。

 泥沼な両国の報復合戦であるが、ロシアのマルゲロフ上院外交委員長は「二国間関係における緊張のエスカレーションや悪意のインフレに興味は無い」と語っている。
 米国は、北朝鮮・イラン・シリアなどの問題において、ロシアの協力を欲しており、欧州のミサイル防衛縮小など関係改善努力を図っていると、各紙は伝える。

Text by NewSphere 編集部