ケリー新国務長官、中東外遊の「成果」とは?

ケリー新国務長官、中東外遊の「成果」とは? トルコを訪問したケリー米国務長官は、トルコに対し、隣国イスラエルとの関係改善を求めた。両国の関係は3年前、イスラエル軍がガザ支援船のトルコ人9人を殺害した拿捕事件をめぐり悪化していた。先月オバマ米大統領の仲介により、イスラエル側が謝罪・遺族への賠償を約束するなど改善の兆しを見せている。ただし、トルコは賠償金額の具合的交渉やガザ封鎖の解除を求めるなど、強硬姿勢を崩していない。
 各紙はイスラエル―トルコ関係の問題と現状、アメリカの中東への懸念や背景について報じている。

 米国の介入によるイスラエルの謝罪に対しては、トルコ内部から「トルコ外相が引き出した‘勝利宣言’」という声(ケリー氏は否定)も聞かれている。先述の強硬な姿勢は、アメリカ政府関係者にとって、「中東の安定性を妨げる」新たな心配の種(ウォール・ストリート・ジャーナル紙)となっているようだ。

 アメリカが更に強く望んでいるのは、2010年から交渉凍結状態が続く、イスラエル―パレスチナ間の和平プロセス対談の再開だと各紙は指摘する。ケリー長官は7日、パレスチナ自治区ラマラを訪れ、アッバス議長と和平プロセスへの道を協議。ウォール・ストリート・ジャーナル紙はさらに、アメリカがテロ組織と位置付けたハマスのリーダー・ハーリド氏との交渉情報(トルコ政府高官の証言)や、トルコの第一政党・AKPのハマスと強い思想主義つながり(更にエジプトのムスリム同胞団にも)、中東において全ての動向はパレスチナ国家につながる(トルコのダウトオール外相)といったコメントを引用した。
 ニューヨーク・タイムズ紙は、1967年にイスラエル―パレスチナ間で発生した国境境界線の現状における各国間の見解を引用。パレスチナは境界線を以前の状態に戻すよう要望し、対してイスラエルは「条件なしで交渉に応じる」と言うが、本音は「立法や治安問題といった基本的な問題の解決や、パレスチナ人からの紛争終了宣言がない限り」、交渉には応じられないと述べた(全て政府関係者の証言)。ケリー長官はパレスチナに対し、8週間における双方の解決における対話再開において、(国際刑事裁判所へのイスラエル訴訟などといった行動を取らないよう求めたという。
 同時に別のイスラエル高官の「パレスチナ人の国際判事などへの更なるアプローチを拡大化は‘正しい方向’で、イスラエルは更なる入植地の建築の延期やパレスチナ囚人の釈放など、パレスチナ側が強く求めている要求にこたえる可能性もある」という証言も掲載しており、状態はまだ未確定な部分が多そうだ。

 更にシリアの内戦終結に対しても、トルコとアメリカは交渉を続けている。ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、「トルコはシリアに対する積極的介入をアメリカに求めているが、オバマ氏は具体的な軍事行動に出ることはない」現状を紹介。さらにケリー長官の「シリアでの政権移行に向けて周辺国はみんな努力している。プレッシャーをかけることによってアサド大統領の目論見を変える必要という明確な姿勢は失っていない」という姿勢を報じている。

 このような現状から見るに、特にトルコにおける外交対策は、「平和交渉そのものに重要な中東の安定性の為にも不可欠で、万端の調子に戻したいもの」だとフィナンシャル・タイムス紙は報じた。ウォール・ストリート・ジャーナル紙も、ケリー長官の二国間に対する見解として、「トルコの立場に対して批判はしないスタンスであり、双方の締結にもタイムラインを求めないが、アメリカはこの関係を中東における安定性の促進として必要不可欠と見ている」「アメリカがどうこうする事ではなく、ただ正しい関係に戻ってほしいだけだ」というコメントを紹介した。

Text by NewSphere 編集部