キプロス銀行再開だが、預金引き出し制限は続く
28日正午、2週間ぶりにキプロスの銀行が営業を再開した。キプロスは金融危機のため、ヨーロッパのベイルアウト(緊急融資)を求め、その引き換えに銀行部門縮小などの改革を要求されていた。キプロスの銀行部門は、租税回避目的の外国預金流入などもあって、経済規模と不釣り合いに肥大化していた。銀行の閉鎖計画、あるいは預金を10万ユーロまでしか保護しないとする決定に伴い、預金取り付け騒ぎの発生が心配されたため、キプロスの銀行は一時営業を停止していたのである。フィナンシャル・タイムズ紙は実際、キプロスの銀行預金残高が急減中であると報じ、3月分の統計ではもっと顕著な結果になるだろうと予測している。
ただし、預金者が1日に引き出せる現金額は当面、わずか300ユーロに制限されることとなった。この措置はユーロ圏諸国では初であり、少なくとも1週間継続される。限度額は段階的に引き上げられる可能性もあるが、各紙は、完全に制限がなくなるまでにはもっと長期を要するだろうと伝えている。欧州委員会は、早期復旧を求めつつ、この措置を合法であると追認した。
警察と民間警備員の警備のもと、入場制限の掛かった銀行支店に行列はできたが、大きな騒乱は起こらなかった。ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、島に集まった外国ジャーナリストたちの期待に反して、キプロス人たちには忍耐力があったとの論調である。しかし市中に現金が不足し、異なる銀行間の振り替え決済もできない不便な状態のため、銀行改革を強いたヨーロッパ側への反感を含め、国民の間に不満が根強いのは確かだ。畜産農家などは家畜のエサを購入できない状態で、ニューヨーク・タイムズ紙が取材した農民は、「飢餓の配給」「(強盗にやられて南アフリカから帰ってきたが)ここでも同じ目に遭った」などと語っている。