米韓合同演習での「長距離作戦」 北の反応を海外紙はどう分析したか?

米韓合同演習での「長距離作戦」 北の反応を海外紙はどう分析したか? 28日、アメリカは「極めて異例な長距離作戦」の実施を発表した。2機のステルス戦略爆撃機「B-2」が、米韓合同軍事演習の一環として、ミズーリ州の基地を飛び立ち、韓国上空を周回。地上の目標に向けて2000ポンド爆弾の模擬弾を投下したという。なお、同機には、核爆弾の搭載も可能だとされる。
 アメリカの今回の「作戦」は、北朝鮮が韓国とのホットライン遮断に踏み切り「戦闘態勢」を誇示したのに対するものとみられる。緊張が増すばかりの朝鮮半島の動向を、海外各紙が探った。

 ウォール・ストリート・ジャーナル紙によると、今回、アメリカ軍がかつてない強硬姿勢に出るまでには、政府内にも、北朝鮮と同列の「意趣返し」に陥れば、いたずらに緊張を煽る結果を生むという反対意見があったという。しかも、朝鮮戦争当時、空からの「弾幕」に大きな痛手を被った記憶を持つ北朝鮮が、航空機の飛来にもっとも神経を尖らせるのは必至だとされる。
 
 オバマ政権はかねてより、「対北朝鮮戦略」が不明確だと言われてきた。同紙によればその理由は、16ヶ月前に権力を受け継いだ金正恩氏を見極めようとしていたことにある。当初アメリカは、スイスの寄宿舎学校で学んだ若き指導者に、西側との連携、自国の政治改革への積極的な姿勢を期待したという。しかし現在では、専門家のあいだでも政府内でも、金氏が父親以上の軍事的冒険主義者だという認識が確たるものになっている模様だ。

 それでも、金氏の度重なる強硬姿勢と脅迫的な発言の目的は、主に、「軍部と国民向け」の「強いリーダー像」作りだという考えが主流だったとされる。
 しかし去年、米国務省が北朝鮮と「段階的な核計画の抑止」と引き換えに食糧援助を行うことで合意したと発表した後、ミサイル発射テストが実行された。さらに3度目の核実験を強行し、それに対する国連の制裁や、米韓合同軍事訓練に反発して、1953年に締結した休戦協定の破棄を一方的に宣言した。韓国とのホットラインを遮断し、米韓への先制的核攻撃の可能性を示唆するなど、エスカレートする一方の北朝鮮の脅しや挑発を、アメリカもついに見過ごしにはできなくなったようだ。

 オバマ政権は、北朝鮮と再び協定を結ぶ意志はないとしており、ついに、かねてからの韓国の要請に応え、「アメリカが長距離の精密な爆撃を素早く、自在に行える能力があること」を誇示するに至ったと見られる。
 ニューヨーク・タイムズ紙によると、ヘーゲル国務長官は27日、韓国の金寛鎮国防相と電話会談して、米韓の同盟は確固たるものであり、「核の傘」を含む韓国防衛には揺るぎがないことを強調した。軍内部から「夜間の出撃も可能だったが、肝心なのは見せることだった」という発言が伝えられるとおり、白昼の飛行目的は「拡大抑止」と「警告」とされる。
 さらに、2010年3月26日に、北朝鮮の魚雷によって韓国海軍の哨戒艦「天安」が沈没し、乗組員ら46人が死亡した事件の「三周年」を意識した日取りからも、アメリカ側の強い意志とメッセージが汲み取れる模様だ。
 なお、今回のB-2の投入については、オバマ大統領も承認しているという。

 北朝鮮の朝鮮中央通信はこれに対し、金第一書記が29日未明に軍幹部との緊急会議を招集し、必要な時に米国本土やハワイやグアムなどの太平洋地域、および韓国にある米軍基地を攻撃できるよう待機命令を出したと報じた。

 一方フィナンシャル・タイムズ紙は、こうした開戦前夜を思わせる雰囲気をよそに、ホットラインが遮断され南北の監視の共有がなくなった開城工業団地では、その後も韓国人の入場が許可されており、407人の韓国人労働者は「なんの危険もないように」平常通りに働いたと報じた。
 実際、多くの専門家は、恒例の米韓合同軍事演習と北朝鮮の年次立法会議が重なるこの時期は、北朝鮮の態度が硬化することが多いとして、今後、沈静化に向かう可能性も高いと見ているという。

 識者は、「開城が閉じられれば、南北調和の証は完全に失われる」とし、わずかな「平常」の灯に最後の希望を託していると語った。「平常」は守られるのか、かき消されるのか。今後の推移が注目される。

Text by NewSphere 編集部