内戦続くシリア 各紙が報じる新たな問題とは?

 内戦が長引くシリアでは、政府側・反体制派双方による殺人や窃盗、拉致などの行為がエスカレートしているという。
 海外各紙は混乱に陥る同国の様子や国民の声を取り上げている。

【混乱の中、EU関係者にも被害が】
 今やシリア各地では武装する民間人が増えているとフィナンシャル・タイムズ紙は報じている。しかし、政府軍は、武装ギャングとも呼ばれる民兵(シャビーハ)を起用しており、不安定な情勢下では、武装している人々が政府軍なのか民間人なのか見分けが困難だという。 こうした事情もあり、双方が暴力や窃盗などをいたるところで繰り広げており、治安は悪化の一途をたどっていると報じられている。

 政府による統治が失われ混乱を極める地域では、市民による司法制度の要求に応える形で、反体制派らが裁判所を次々と新設しているとニューヨーク・タイムズは報じている。中でも、国内で優勢となっているイスラム過激派らが筆頭となり、イスラム法に基づいたシャリア委員会が幅を利かせているようだ。しかし、中には適切なシャリア法や民法の知識さえも持ち備えていない者もおり、簡単に死刑を言い渡すなどして問題となっているという。

 またガーディアン紙によると、ダマスカス近郊でEUのシリア人職員アフマド・ハシデさん(32)が、自身が居住する地区へ支援物資を届けていた際にロケット弾で死亡したという。EU関係者が殺害されるのは初という。攻撃元が政府側か反体制派側かは不明のようだ。EUは「10万人もの罪なき市民を死に至らしめ、100万人以上を難民にした暴力を終結させるため、緊急の対策を求める」としてシリアの深刻な状況を訴える声明を発表した。

【ならず者となった軍隊を嘆く国民たち】
 争いに巻き込まれ、家が崩壊した市民の中には、混乱の中で家財が盗まれたというケースも少なくない。実際、家具や家電の取り扱い量が増えている中古市場はその規模を拡大しているとフィナンシャル・タイムズ紙は報じている。同紙は、「以前は窃盗などなく、軍は良い軍だった。今は全てがめちゃくちゃだ」と嘆く声を取り上げている。さらに、反体制派も今では政府軍のように振舞っていると失望する人々が相次いでいると報じた。
 シリアは「権力争いの渦中にあるジャングル。半年もすれば、この状況に疲れ果てた国民はアサド復活を望むようになるかもしれない」と語る国民の声をニューヨーク・タイムズ紙は取り上げた。この革命による変化は人々が反発するようになったことだ、と考える声も多く、いずれ平和が訪れた際には、過激派による偏った信仰ではなく、適切な信仰を取り戻すことになるだろうと望みを抱いていると同紙は報じた。

Text by NewSphere 編集部