「庶民派」温家宝首相引退 海外紙が指摘する10年間の成果と課題とは?
中国の温家宝首相は5日、全人代にて最後の「政府活動報告」を行った。海外各紙は、温首相の10年間の功績と残した課題を報じている。
温氏の功績の一つは、世界金融危機など厳しい情勢下で、積極財政により経済成長を維持してきたことだったと指摘される。サウス・チャイナ・モーニング・ポスト紙(香港)はこれを具体化し、中国の半分は都市化され、そのほとんどの家はテレビや冷蔵庫や洗濯機を持ち、5家族に1つは車がある状況だ、と報じた。
2003年のSARS問題、2008年の四川大地震や2011年の列車脱線事故など、温氏の非常事態への対応を評価する声もあるという。「庶民派」首相としての振る舞いは国民からの人気も高く、「温家宝お爺ちゃん」と呼ぶ声もあったという
しかし温氏は、首相就任時に表明していた改革は十分に成し遂げられなかったと、各紙は報じている。温氏は10年前の首相就任時、深刻な国内の貧富の格差を認めたうえで、「均衡ある発展」を目指す考えを表明していた。これに関し、「農村」「企業・国有資産管理態勢」「金融システム」「政府機構」の4分野での改革推進も公約に掲げていた。さらに「法に基づく行政」「行政への監督」にも度々言及していた。だが、いまだにこれらの課題は残されたままだ。しかも皮肉なことに、昨年には温氏一族の巨額蓄財(総額27億ドル以上)がニューヨーク・タイムズ紙で報じられた。
今回の全人代にて、「経済・社会の発展には依然として多くの矛盾と問題が存在していることをはっきり認識している」と温氏は述べている。理想と現実の溝を感じさせる発言といえる。
温氏が本当に中国の政治・社会制度改革を志していたのかはわからない。温氏は既得権益との戦いに勝てなかったと擁護する専門家は、「それでも、(改革に言及する)リップサービスはまだ重要なのだ」と述べている。