中国大気汚染の脅威 各紙が指摘する重要論点とは

中国大気汚染の脅威 各紙が指摘する重要論点とは 中国で大気汚染が深刻な問題となっている。中国の環境保護省は4日、周生賢環境保護相の発言をサイトで公表した。それによると、有害物質PM2.5を含む濃霧は国土の4分の1に広がり、6億人が影響を受けたという。一方、大気中のPM2.5の濃度を再来年までに5%下げるという政府の目標も打ち出した。中国メディアの報道によると、1月の北京ではPM2.5の大気中濃度が国の基準を上回った日は、27日に上ったという。
 その影響は日本にも及び、西日本への飛来が確認され、福岡市などでは日本国内の基準値を超える濃度が観測されている。専門家は、「健康な大人が心配する必要はない」とし、呼吸器系の疾患がある人には、外出を控えるなど注意を呼び掛けている(PM2.5は非常に小さいため、市販のマスクを通り抜けてしまう)。
 この問題に関しては、中国・日本それぞれに何を求めるかで各紙の違いが現れた。

 まず朝日新聞は、中国政府には改善を急いで進めることを、日本に対しては環境技術による協力を求めている。尖閣問題をめぐる軋轢を認めつつも、こうした協力が実現すれば「両国の関係を前に進める力にもなり得る」と楽観的な論調だ。問題の原因を、“日本の高度成長期のように”環境対策を置き去りにし、経済成長に突き進んできたためと指摘。しかし、市民の環境意識が高まり、政府も「エコ文明建設」を掲げるなど変化がみられるという。中国での環境ビジネスは日本企業にとってもチャンスだととらえており、政府にはそのための橋渡しを求めた。
 対して産経新聞は、「越境被害に責任を果たせ」と中国の責任を厳しく追及する論調だ。大気汚染の深刻化を受け、北京市では工場の操業停止や公用車の使用制限などを実施したことに触れつつも、中国政府の対応は“無責任に過ぎ”、“世界第2位の経済大国としての自覚をまったく欠いている”と断じた。環境保護省が言及した自然現象の影響も本丸ではないとし、原因は、共産党独裁下で企業も役所も汚染が進む現状を隠してきたからだと指摘した。大気汚染で数千~数十万人の死者が出たという中国の報道にも言及し、真偽の究明と対策を求めている。
 なお読売新聞は、社説では特に取り上げていないが、5日の朝刊1面で西日本に不安が広がっていることなどを報じた。

 また海外の報道としては、ロイターが、対策が進まない背景として、国営企業の中国石油天然ガス集団(CNPC)と中国石油(シノペック)が環境基準の強化に抵抗していること、規制当局である環境保護省の権限が弱いことを指摘した。企業の抵抗の背景には、エネルギー価格が高止まりする中、販売価格を決める権限がないこともあると報じた。「安い燃料費ときれいな空気の両方を同時に手に入れる方法はない」という専門家のコメントも掲載し、この問題の背景にある政治的・経済的に困難な状況を浮き彫りにした。

Text by NewSphere 編集部