ヤミ献金疑惑のスペイン政権、なぜ倒れない?

ラホイ

ヤミ献金疑惑のスペイン政権、なぜ倒れない? スペインの与党国民党が、ヤミ献金疑惑に揺れている。スペインの大手新聞エル・パイスは31日、国民党が未申告の隠し口座および帳簿を保有し、党幹部たちに対し日常的に、現金を封筒に入れて支給していたと報道した。ラホイ首相へも1997年から2008年にかけて35回、計322,231ユーロが渡されたと記載されており、資金の出所は主に、国の公共事業受注を狙う建設業者などであるという。ラホイ首相は当初コメントを控えていたが2日、疑惑を全面否定した。ニューヨーク・タイムズ紙は、2009年収賄で起訴され辞職した同党会計バルセナス氏が、その際にオフィスから「党幹部への暗黙的な脅威」とも言うべき書類9箱を持ち出したとの証言を伝えている。

 スペイン国民はラホイ首相の潔白宣言を信用しておらず、国民党の支持率は急落。2011年11月ラホイ首相選出時点で44.6%であったのに対し、わずか23.9%となった。ラホイ首相自身の不支持率も77%に達している。スペインの信用危機が一段落したとは言え、いまだ緊縮政策を余儀なくされ26%の高失業率にあえぐスペイン国民は、インターネット上の首相リコール署名に3日までに約77万署名を寄せるなど、憤慨している。そして最近のスペインは国民党だけでなく、各党の300以上の政治家や、さらに王室関係者や最高裁長官までもが、汚職疑惑で捜査対象あるいは裁判沙汰に至っている状態である。バルセロナIESEビジネススクールの教授は、スペインの各政党がそもそも透明性を重視する構造になっていないと指摘した。

 各紙は皮肉なことに、国民党だけが嫌悪されているのではないがゆえに、ラホイ政権が即座に倒れる心配は薄いと見ている。ウォール・ストリート・ジャーナル紙の指摘では、たとえば国民党以前に8年間政権を担った主要野党・社会党は国民党よりさらに低い支持しかなく、同党のルバルカーバ書記長も、ラホイ首相を上回る81%もの不支持率を持っている。また捜査・裁判には何年も要する可能性があるのに対し、国民党は現在議会で多数を堅持しており、次回国政選挙は3年後である。

Text by NewSphere 編集部