【マリ紛争】優勢の米仏が抱く懸念とは?

【マリ紛争】優勢の米仏が抱く懸念とは? マリでイスラム武装勢力と戦うフランス軍およびアフリカ諸国軍は、一時は南部の首都バマコに迫った武装勢力を押し戻し、ついに北部の都市トンブクトゥやガオを奪回するに至った。しかしまだ戦いの終わりが見えたとはいえない。「敗北する前に後退し」、いまだ砂漠に潜む武装勢力との、ゲリラ戦が続くことになる。

 ガオでは、武装勢力は10ヶ月にわたり街を占拠。ニューヨーク・タイムズ紙によると、武装勢力は、イスラム信者でないと疑った人々を略式処刑し、投石し、切り刻んだという。街が仏軍らによって奪回されると、住民は自由を取り戻したが、周辺に武装勢力が潜んでいる危険も感じているようだ。一部の住民は、武装勢力と疑わしき人物や、武装勢力を支持していたアラブ人などの商店を襲撃しているともいわれ、現地はいまだ混乱した状況だという。

 武装勢力に対し1月11日から軍事作戦を開始したフランス軍は、緒戦で苦戦したものの、最近は全く死傷者もなく快進撃を続けていたという。フィナンシャル・タイムズ紙は、これを受け、オランド仏大統領への支持は上昇していると報じた。ただし同紙は、国内政策の不人気を覆すほどではないとし、まだフランス人人質7人が武装勢力に拘束されていることも指摘した。あるフランス外交官は「リビアで勝ったからといってサルコジ(前大統領)は助からなかったのです」と評しているという。

 一方米軍は、元々アフリカにそれほど地歩を固めておらず、オバマ政権はマリ情勢への深入りを避ける姿勢でもあったが、フランス軍の輸送と補給の支援を開始する。28日には隣国ニジェールと地位協定に調印し、米軍人の行動の自由を得た。米軍はマリ国境近くの小規模な滑走路を情報収集基地に変え、無人偵察機による砂漠地帯の監視や、特殊部隊による作戦を展開する目的であるという。この地域はマリ国内のバマコ周辺などよりもむしろ戦場に近いほか、米仏当局は武装勢力が砂漠内を越境してニジェールなど周辺諸国に流入することを警戒している。ニジェールと米国は9.11テロ事件以来関係を築いており、2010年ニジェール軍のクーデター後においても、米国からの装備・訓練支援は強化された。米国は、同様に他の周辺諸国にも拠点構築を進める可能性があると報じられている。

Text by NewSphere 編集部