アルジェリア人質事件 背景にある「カダフィの遺言」とは

アルジェリア人質事件 背景にある「カダフィの遺言」とは 19日、アルジェリア内務省は、南東部イナメナスの天然ガス関連施設襲撃事件に対する軍の作戦終結を宣言。4日間に及んだ事件で人質23人と犯人グループ32人の死亡を発表した。
 今回の事件について、海外各紙はそれぞれ、事件の詳細、背景を分析した。

 今回の事件の詳細を報じ、事件の全容解明を試みたのはウォール・ストリート・ジャーナル紙。まず公式発表では、事件についての流れは以下の通り。
 ・16日 イスラム過激派グループが天然ガス施設を襲撃し、人質を確保。
 ・17日 アルジェリア軍が施設を包囲。
 ・18日 アルジェリア軍の攻撃。銃撃戦により、多数の死者が出る。
 ・19日 作戦終結宣言。
 ただ、この事件には未だ多くの謎が残るという。たとえば、生存者の談によれば、襲撃犯の手際は、内部構造やローテーションなどを知っていなければ不可能なほどよかったとされる。テロリストたちのアラビア語には複数の方言が混じっており、むしろ英語のほうが堪能だったブロンド男性がいたとの談もある。目的についても、人質確保ではなく施設爆破が主だったが、失敗に終わったために事後策に出たとも報じられているという。また、18日のアルジェリア軍の突撃に伴って施設外に逃亡を試みたとされるテロリストが、実は施設内部に集結し、施設の爆破を再度試みようとしていたという説もある。

 ニューヨーク・タイムズ紙は、事件の背景として「アラブの春の暗黒の副作用」に着目。カダフィ大佐は、自分を倒せば、北アフリカにアルカイダがはびこり、無法地帯に後戻りすると発言していたことを紹介。この「カダフィの遺言」が今や現実化しつつあると報じた。「独裁者たちが去り、民衆の時代がやってくる」という西側諸国の希望に満ちた見方は、アルジェリアなどの周辺当事国にしてみれば、「現実を知らない無邪気すぎる」ものだったという。実際、強大な権力、弾圧、懐柔などを駆使し、多民族・多宗教・多教義のるつぼを統治してきた独裁者達なき今、その反動が吹き出すのは自明の理とされる。マリの反政府勢力の台頭も、アルジェリアの事件も、この「反動」にほかならないと報じた。

 一方フィナンシャル・タイムズ紙は、アルジェリアにとっての天然ガス・石油事業の重要性に焦点を当てた。アルジェリアが、90年代の内戦による荒廃から立ち直り、今なお残る不平等や生活不安を覆い隠し、インフラ整備や国民生活の向上という明るい未来を描くうえで、それを下支えする国の「要」を守るためには、いかなる犠牲をも払わざるを得なかったものと見られているという。
 今回の襲撃は、わずか4日間とはいえ、国にも企業にも、何年も引きずりかねない莫大な損失をもたらした。今後、同国での事業展開においては保安コストの大幅増は避けられず、海外からの投資も冷え込む可能性が高いと指摘される。

Text by NewSphere 編集部