フランス、マリ地上戦に着手 ねらいと勝算は?

 16日、マリに軍事介入中のフランスは、かねてより噂されていた地上作戦への着手を初めて公式に認めた。背景には、当初の支援策として発表した「空爆」の効果が思うように上がっていない事実がある。戦闘ポイントから掃討したとの手応えを得ても、一般家庭に潜んで機を待ち、奪還するゲリラ兵を相手に、「特殊な戦闘」を強いられ、フランス軍は苦境に立たされているという。

 地上戦の開始により、戦況は動くのか。支持と支援を表明している各国はいつ動くのか。海外各紙は、手段を選ばないイスラム過激派の脅威の広がりを報道した。

 ニューヨーク・タイムズ紙によれば、仏軍は16日、中部ディアバリで、マリ国軍とともに武装勢力と交戦に入った。フィナンシャル・タイムズ紙が指摘したように、フランスとしてはあくまでも、軍事介入の正統性を国際社会に下支えして欲しく、「経済的、政治的打算」のない「純粋な平和のための」支援を掲げてきた。しかし、空爆を中心に「周辺的軍事介入」にとどまっていたかった仏軍が対峙したのは「軍備も装備も訓練も充実している。しかも、戦意も高い」敵だったという。

 訓練も予算も限られたマリ正規軍の活躍は期待できない。トーゴ、ナイジェリア、セネガル、ニジェール、ベナン、チャドら周辺諸国の軍はまだ来ない。しかもアフリカ諸国は、予算の問題から長期戦には持ちこたえられないと公言し、財産的支援を強く求めているほか、当面の軍事力にすら疑問符が付く。ウォール・ストリート・ジャーナル紙によれば、EUでは200人程度を、早々にマリ軍の訓練のために派遣するとしているが、現地の武官は端的に、「すでに訓練云々の時期は過ぎている。すでに戦闘は始まった。今もっとも大切なのは、素早い行動だ」と述べたという。

 こうした中、16日にはマリ北部の隣国アルジェリアのガス関連施設で、外国人拉致事件が起こった。イスラム・マグレブ諸国のアルカイダ組織(AQIM)が、「フランスのマリへの軍事介入への報復としての犯行」を表明。軍事作戦の停止を求めており、軍事介入の脅威が一気に鮮明になった格好だ。

 未だ具体的な動きを見せないアメリカも、16日にドイツが具体的な輸送機の提供を申し出たこと、さらに、米人が拉致されていることから対テロ意識が高揚すると見られており、いよいよ、引くに引けない立場に陥りつつあるという見方もある。

 オランド仏大統領は今回の軍事行動の意図をこう明言したという。「(テロリストを)殲滅せよ。できるものなら捕獲せよ。これ以上、害を及ぼせないようにせよ」。その実現はなるのか。すでに開けてしまった幕を引くためには、国際各国の真の協調と覚悟と行動が求められていることを強く示唆する報道となった。

Text by NewSphere 編集部