オバマ大統領、「一匹狼」を国防長官に起用した理由とは

オバマ大統領、「一匹狼」を国防長官に起用した理由とは オバマ大統領は7日、新国防長官に共和党のチャック・ヘーゲル元上院議員を、CIAの新長官にジョン・ブレナン大統領補佐官をそれぞれ指名した。これで、新国務長官に指名された民主党のジョン・ケリー上院外交委員長と合わせ、2期目の外交・安全保障チームの陣容が固まったことになる。
 ただし、今回の人事については、上院の内外から疑問や反発の声が相次いでいるという。海外各紙は波紋必至の人事を敢行した大統領の思惑と、周囲の反発の理由、今後の推移について分析した。

 ウォール・ストリート・ジャーナル紙によれば、ブレナン氏は、オバマ政権の1期目に、国土安全保障、テロ対策の大統領補佐官として、無人機による暗殺作戦を遂行したほか、ウサマ・ビンラディン容疑者の急襲作戦でも大役を果たし、大統領の厚い信任で知られる。今回、ホワイトハウスと近い者をCIA長官にするという伝統人事に戻った格好で、一部から、ブッシュ政権下でテロ容疑者への過酷な尋問を容認していたという批判や、軍事・テロ対策での秘密保持や強すぎる権限に対する風当たりはあるものの、順当な人事とみられるという。
 
 一方、ブレナン氏がかすむほどの波紋を広げているのは、ヘーゲル氏の起用だ。ベトナム戦争の従軍経験を持つ同氏の起用について、大統領は、戦争を肌で知っている経歴を高く評価し、「超党派の伝統を体現している」と胸を張り「国防という大事に穴をあけないために」上院の素早い承認を求めた。
 しかし、ヘーゲル氏の「異色」さは、従軍経験にとどまらない。2006年、2007年にはイラク戦争への反対姿勢を強め、イスラエル ロビー団体への批判的な発言をし、極めつけに、2008年の大統領選では、共和党員であるにもかかわらず、オバマ氏を支持した。これを問題視する声は共和党内にも少なくなく、「(大統領が)共和党員の重用で超党派人事を演出しているつもりならば、筋違いだ」との声も上がっているという。ニューヨーク・タイムズ紙によれば、ユダヤ人団体名誉毀損防止同盟の最高責任者、エイブラハム・フォックスマン氏も「大統領の任命特権を尊重」しつつ、「大統領とかけ離れたイラク、イスラエル思想を持つ」同氏の起用に疑問の声を寄せている。
 もっとも、フィナンシャル・タイムズが報じたところによれば、親イラン、反イスラエルと取りざたされるヘーゲル氏の発言は、当人によれば、「よく検証してもらえば真意が別にあるとわかってもらえるはず」とのこと。上院でも、疑問符を付けつつ、最終的には承認に向かう風向きと見られる。

 オバマ大統領と上院時代からの個人的な親交があるほか、長引く米軍のアフガニスタン駐留に否定的な点などで気脈を通じ、対話重視の外交路線に沿っていることからの抜擢と見られるこの人事が吉と出るか凶と出るか。承認を受けたとして、その後の同氏が当面手腕を発揮するべきは、渦中の中東外交ではなく経費の削減と見られるが、同氏の動向には、今後も、多方面からの注目が集まることを窺わせる報道となった。

Text by NewSphere 編集部