【2013年注目ニュース】 1.アメリカ「財政の崖」問題の行方

 アメリカ政治・経済における目下最大の課題といえる、「財政の崖」問題。「ブッシュ減税」などの失効による実質的な増税と歳出の強制削減が重なることで、急激な景気悪化が予測され、2013年前半で3%近いマイナス成長に陥ると予算局は警告している。大統領選後から、本格的にオバマ大統側と共和党(下院第一党)の協議が続けられてきたが、合意には至らず、実質増税が始まることになった。
 2013年の国際経済にも大きな影響を及ぼすこの問題の背景と今後の予測を整理する。

【合意できない理由】
 「財政の崖」回避に向けた交渉において、主な対立点は、富裕層への増税をどこまで認めるかといえる。共和党内部には増税に断固反対する強硬派が一定数おり、「党の保守的な原則を損なう取引に合意するより、財政の崖から飛び降りるほうがよい」とまで述べる議員もいる。こうした厳しい状況下で、共和党のベイナー下院議長は、社会保障などの大幅な歳出削減と引換に、年収100万ドル以上の富裕層に対する所得税率を引き上げる提案をした。ただ、財政の崖回避のために十分なインパクトを与えられないため、拒否された。オバマ大統領側も様々な妥協を提案しているが、「どうやって歳入を増やすか」という点で決定的な溝があるため、合意には至っていない、

【今後の予測】
 今後については以下のようなシナリオが予測されている。
 1. 歳出削減/歳入増加に必要な決定を先送りし、オバマ大統領側が主張する富裕層増税で部分合意する。
 2. まずは歳出削減、給与税率の増加、代替ミニマム課税など主要課題に対処する。
 3. すぐに合意せず(財政の崖が訪れ)、劇的な不況を引き起こす。
 結局どのシナリオも不確実性を長引かせ、消費者や企業の不安が高まり、来年の経済はかなり減速することになると、海外各紙は悲観的に報じている。
 なお現在は上院に焦点が移り、水面下で協議が続けられている模様だ。これまでも重要な役割を果たしてきた、共和党のマコネル上院院内総務の動向に注目が集まっている。

 実際にアメリカ経済が急激な失速を見せれば、貿易などで関係が深い日本にも悪影響が及ぶと考えられる。「世界の成長率が半減する」と予測する格付け会社もあり、今後も注視が必要だ。

Text by NewSphere 編集部