サイバー攻撃に狙われ続けるイラン、その理由は?

サイバー攻撃に狙われ続けるイラン、その理由は? イラン政府は、南部にあるエネルギー関連施設などがサイバー攻撃を受けたと発表した。正確な時期や被害規模は明らかにしていないが、数カ月間にわたり南部ホルモズガン州にある発電所や産業施設が「スタクスネットに似た」マルウェアの攻撃を受けたようだ。
 海外各紙は、不明点の多い同国の発表内容やその背景に浮き上がる米国やイスラエルの存在について報道している。

【混乱するイランの発表】
 各紙は、イラン政府が行った発表をもとに、イランのエネルギー関連施設がサイバー攻撃を受けたが、国内の熟練したハッカーの協力により、攻撃の進行は食い止められたと報道している。しかしウォール・ストリート・ジャーナル紙は、海外メディアが情報源としているイランメディアの報道は、政府の様子を的確に把握していないと報じている。実際、イラン国営放送サイトには、「記者会見では諸施設へのサイバー攻撃に対応する準備ができていると発表した」「サイバー攻撃撃退報道は誤り」という旨のコメントが掲載されていると報じられている。また、攻撃が事実だとすれば、カスペルスキーなどの大手セキュリティ会社が動き出すはずだが、今のところ目立った反応はないとも同紙は指摘している。

【黒幕は米国&イスラエル?】
 言及された「スタクスネット」は、2010年に出現したコンピュータウイルスで、イランの原子力発電所のウラン濃縮施設への感染が確認されている。 マイクロソフトWindowsに感染するウイルスで、産業用制御システムにも感染して実害を生じる機能が特徴。イランの核開発を遅らせる目的で米国とイスラエルが仕掛けたものだとされている。なお、両国とも公式には認めていないものの、このようなレベルの高いマルウェアを操作できる組織は、CIAなど限られているとウォール・ストリート・ジャーナル紙は報じている。
 ニューヨーク・タイムズ紙によると、数ヶ月前にサウジアラビア石油会社と米国の金融機関が受けたサイバー攻撃がイランによるもので、今回の対イラン攻撃はその報復である可能性があると推測されているようだ。今回の攻撃は米テキサス州ダラスから始まり、マレーシアとベトナムを経由してきたという情報もある。
 BBCニュース(英)も、イランがこれまでも繰り返しサイバー攻撃を受けており、エネルギー輸出やウラン濃縮施設に障害が生じてきたと報じた。欧米諸国はイランの核兵器開発を疑っており、イスラエルももはや時間の問題であるとして危険性を国連へ訴えてきた。米オバマ大統領もこれを阻止するために適切な処置を行うと述べているという。

 核問題に関する話し合いが滞り、イランに対する厳しい経済制裁が続く中で起きた今回のサイバー攻撃騒動。詳細は明らかにされていないままだが、来月にも話し合いが再開され、交渉が進展することを期待されているようだ。

Text by NewSphere 編集部