米領事館襲撃事件はなぜ阻止できなかったのか?

 9月11日に起きたリビア東部ベンガジでの米領事館襲撃事件に関し、検証を行なっていた米独立調査委員会は18日、調査結果を公表した。その報告書によると、駐リビア米大使を含む4人が死亡した襲撃事件を阻止できなかった原因には、外交全般を管轄する米国務省のシステム的な欠陥と、情報機関の分析の甘さがあげられるという。ただ、米政府職員に不正行為などはなかったと判断し、個人に対する処分は求めていない。委員会は再発防止に向け、警備態勢の改善、危険地域での情報収集活動強化などを提案した。クリントン国務長官は、これらの改善勧告をすべて受け入れるとしている。
 海外各紙は、襲撃事件を阻止できなかった要因として、情報と警備の両面について詳報している。

 フィナンシャル・タイムズ紙は、襲撃前に繰り返し現地から要請されていた警備の増強を国務省の担当官が拒んでいたという報告書の指摘について報じている。ニューヨーク・タイムズ紙も、トリポリの米大使館による警備強化の要請をワシントンが無視していた点をまず取り上げている。

 一方ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、外交官の任期が短いという国務省のシステム的な問題について取り上げている。報告書によると、米国の外交官の任期はしばしば40日にも満たない場合があり、そのため外交官がいかに有能で献身的であっても、経験に欠けるというのだ。襲撃事件において殺害された駐リビア米大使も、警備の増強を要請していたにもかかわらず、今回のような事件が起きるとまでは予測できなかったとしている。

 ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、情報機関とホワイトハウスが事件直後に行っていた状況説明が誤っていたとの調査委員会の指摘を取り上げている。当時、米政府は、襲撃が反イスラムの映画(「イノセンス・オブ・ムスリム」)に抗議する大衆によるものだと説明していたが、今回の調査結果はそれを否定している。

 ニューヨーク・タイムズ紙も、情報機関の甘さについて報じている。すなわち、大局に立った安全全般に関する評価をないがしろにして、特定の情報に頼りすぎたために、襲撃事件を予測することができなかったと委員会は指摘しているという(なお、独立調査委員会のメンバーは、退役したペンタゴンのトップや元外交官などから構成されている)。

 またフィナンシャル・タイムズ紙は、米国務省が、訓練されていない現地の民兵に依存し過ぎていたという報告書の指摘を取り上げている。ウォール・ストリート・ジャーナル紙もこの点について言及し、大きく紙面を割いている。報告書によると、現地の民兵は忠誠心に欠けるところがあり、襲撃の数週間前にも賃上げのためにストライキを行なっていたという。襲撃時の監視カメラには、領事館を後にしたトラックが写っており、調査委員会は同乗者について今なお調査中であるという。

Text by NewSphere 編集部