北朝鮮、「衛星」打ち上げ成功-本当の脅威とは?

北朝鮮、「衛星」打ち上げ成功-本当の脅威とは? 12日、北朝鮮は「衛星搭載」とする長距離ロケットの発射を強行した。かねてより国際社会から中止を求められ、10日には延期を示唆していただけに、西側の不意をついた格好だ。今回の初成功は、北朝鮮が、韓国、日本、ひいては、アメリカ西海岸にまでミサイルを飛ばす実力を身につけたことを意味する。北朝鮮は「平和的目的」を強調しているが、核弾頭の搭載を目論んでいることは公然の秘密とされる。
 打ち上げから数時間後、北朝鮮が「打ち上げ成功」を祝うのをよそに、国連安保理は緊急会合を開いた。各国も「安保理決議への明白な違反行為」への「制裁の強化」を求める声明を発表。一方、北朝鮮と、武器の開発や取引によって強いつながりを持つイランは「アメリカなどの独裁国家は、自由な独立国の進歩を阻むことはできない」との声明で祝福した。
 海外各紙は、今回の発射成功が誰にとって、何を意味するのかに焦点を当てた。

 フィナンシャル・タイムズ紙は、これまで北朝鮮が発表してきた「技術的困難」は、実は周囲の監視をあざむく手段だった可能性を示唆。今回の打ち上げを北のプロパガンダの勝利と位置づけ、完膚無きまでに恥をかかされたオバマ政権や国連安保理は、対抗を余儀なくされると示唆した。

 そもそも今回の成功は本当に「脅威」になりうるのかに疑問を呈したのはニューヨーク・タイムズ紙。今回の成功を、「過去の失敗をもたらした複数の問題を修正した、目覚しい躍進」と位置づけつつ、科学者がこれを手放しで評価はしていないと報道。同紙によれば、今回打ち上げられたロケットに「核弾頭を装備」し、「目的地に到達させる」ための課題は困難で、解決にはまだ時間がかかるという。第一に、「洗濯機サイズ」の今回の衛星に比して、核弾頭を小型化する必要がある。さらに、大気圏外に打ち上げられた核弾頭を空力加熱から保護するカプセル(再突入体)を開発せねばならない。その点から、未だ軍事上の脅威とはなりえていないというのだ。

 一方ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、技術的進歩そのものよりも、問題は、北朝鮮がイラン、ミャンマー、シリアなどと武器・技術取引を行い、核ミサイルの相互開発に拍車がかかることだとした。これを避けるためには、破壊工作をも視野にいれた、これまで以上の対策が必要だという。とりわけ焦点は、北朝鮮に唯一睨みをきかせられる国、中国の協力が得られるかだ。特に中国にとっては、北朝鮮への威嚇としてのアメリカや韓国の軍事演習は、自らへの挑戦とも映り得るため、それを嫌っての行動を促せれば、抑止効果があるかもしれないとされる。

 なお、今回「軌道に乗せることに成功した」と発表された衛星が、本当に北朝鮮のコントロール下にあるかは不明だ。世界では現在、独自の衛星打ち上げに成功した国は10カ国にすぎない(ロシア、アメリカ、フランス、日本、中国、英国、インド、イスラエル、イラン)。北朝鮮の今後の行動に、世界の注目が集まっている。

Text by NewSphere 編集部