エジプトは混乱のトンネルを抜け、安定と繁栄にたどり着けるのか?

エジプトは混乱のトンネルを抜け、安定と繁栄にたどり着けるのか? エジプトでは、モルシ大統領が、強権発動によって王手をかけた憲法草案の国民投票をめぐって、賛成派と反対派が激しく衝突。そんな社会的混乱の真っ只中で、IMFが、最終合意寸前だったエジプトへの融資について、モルシ大統領から延期の申し入れがあったと発表した。社会的混乱の激化によって、融資と引き換えに課される厳しい財政改革に赤信号が灯ったためだという。
 エジプトはこの動乱を切り抜け、安定と繁栄にたどり着けるのか。海外各紙は多角的な分析を行った。

 ニューヨーク・タイムズ紙は刻々と変化する国内情勢に注目。動乱の火消しに躍起の大統領側が、会議を重ね、反対派勢力との合意案を模索する一方、反対派は未だ足並みが揃わず、不信任票と棄権の選択で揺れているという。さらに、裁判官の90%は国民投票監視のボイコットを表明。「愛国心のもとでの統一」を呼びかけた軍の動きも、混乱に乗じて表舞台に出てくる前触れかと憶測を呼んでいる模様。15日の国民投票は可決されるとの見方が強いが、モルシ政権信任の現れというより、国内の安定を求めての結果だと推察される。

 国民投票での信任が実現すれば、モルシ氏の有利に働く可能性が高いと分析するのはウォール・ストリート・ジャーナル紙。同国の経済は、長引く混乱によって観光客や投資家に敬遠されてきたことや、エジプト・ポンドの下支えで外貨準備高が大きく目減りしていることから、破綻寸前にある。国民投票の信任は、国政の安定を訴え、投資や融資を引き出す一助になる可能性があるという。
 
 ただ、国政安定とともに欠かせない財政改革については、9日に発表された増税が反発のあおりを受けて早々に取り消されるなど、政府の不手際を見ても、痛みを伴う改革を国民に納得してもらうことは難しいと予想される。IMFでは、中東圏における民主主義国家誕生への期待感から、ユーロ圏外では最大の48億ドルの融資を用意している。これを無事に受けられるかが、エジプトの明暗を分けると指摘されている。
 
 その「民主主義の行方」について、フィナンシャル・タイムズ紙は、そもそもイスラム教徒にとっての「民主主義」とは、「多数派の意見を押し通すこと」を意味するという識者の談を紹介。「イスラム政権下の民主主義国家」という存在の危うさに切り込んだ。同紙によれば、今回の動乱を受け、アラブ首長国連邦をはじめ、中東諸国からはエジプトの轍は踏むまいという警戒感が漂っているという。仮に憲法が国民の信任を得たとしても、大統領が自分の支持母体であるイスラム派のみを優遇した事実は拭えず、世俗派との協調を早々に諦めたことからも、模範的な憲法制定のプロセスとは言えないとした。
 とはいえ、今回の一件によって、「少数」と見られていた「非イスラム派」の意外な「力」が証明されたともいえる。次の選挙では大躍進の可能性もあるとし、そのときこそ、エジプトの「民主主義」が試されることを示唆した。

Text by NewSphere 編集部