「増税断固反対」ティーパーティーに悩む共和党

 年明けに減税失効と歳出の自動削減が重なり、経済の深刻な失速を招くとみられるアメリカの「財政の崖」。これを回避するべく、大統領側と共和党との折衝が続いている。選挙公約の「富裕層の増税」を不可避とする大統領と、支持基盤である富裕層の狙い撃ちは受け入れがたいとする共和党は真っ向から対立。結局、大統領の再選という民意を受け入れざるを得ない共和党側が歩み寄り、3日、ベイナー下院議長は大統領に対し、「一律の税制改革による税収拡大」という妥協案を提示した。しかし、大統領はこれを一蹴。しかも、同案にはお膝元の共和党からも異論が噴出した。
 共和党は団結を取り戻せるのか? 民主党との妥協点は? 海外各紙は難航する危機の回避を多角的に分析した。

 フィナンシャル・タイムズ紙は、大統領とベイナー氏との交渉決裂による溝の深さを伝え、大統領が有権者に対し、「富裕層を守るために、低・中間所得層を食い物にしようとする共和党」というイメージをアピールしようとしていると指摘。一方、共和党上層部は、「本来増税そのものに反対しているところ、ベイナー氏が苦渋の妥協姿勢を示しているのに対し、大統領にはまったくそれがない」と非難しているという。
 
 ニューヨーク・タイムズ紙によれば、大統領側と共和党にはそれぞれ泣き所がある。交渉の妥結点が見つからなければ、中間所得層の減税のみを継続し、その他の争点を先延ばしするという解決策が取られる公算が高いが、そこにも至らない場合、民主党のリベラル派が歳出削減に嬉々として応ずる可能性が高い。ただし、その場合にやり玉に挙げられるのは、共和党が死守したい軍事費だという。

 一方、連邦債務上限の引き上げについては、立場が逆転。社会保障の充実を維持したい大統領側は、どうしても、支出の重なる年末までに連邦債務上限の引き上げを共和党に納得させなければならない。共和党側としては、デフォルト(債務不履行)は望むところだとされる。

 しかしそうはいっても、大統領再選が証明した「民意」の旗印を掲げる民主党の優位は変わらないという。ピュー・リサーチ・センターの調査によれば、「もしも、財政の崖が回避できなかったら、その責任は誰にあるか」という問いに対し、有権者の53%は共和党と答え、オバマ大統領とした28%とはかなりの開きがあった。

 ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、こうしたなか、実際、共和党内にも、妥協を「致しかたなし」とする議員もおり、一方「増税反対」のシュプレヒコールを叫ぶ一部のティーパーティー(超保守派)議員は妥協案の内容を見ぬまま闇雲に反対しているともされ、党内情勢は不透明だと伝えた。
 
 ベイナー氏は、党内の結束と現実的対応を求めて、先の案に猛反発した保守派議員数名を要職から遠ざけたという。しかし当の本人が、打撃となるどころか、かえって地元有権者からの支持につながったと語るなど、今後の党のかじ取りの難しさが浮き彫りになった。

Text by NewSphere 編集部