エジプト、大統領令を巡る混乱―海外紙は、混乱の様相を多角的に報道―

Mohammed_Morsi 25 日、またしてもエジプトで抗議のデモが起きた。これは、22日に発布された大統領令に反発したものだ。モルシ大統領の出身母体であり、かつ、議会の多数派であるムスリム同胞団が攻撃の対象となり、事務所がデモ隊に襲撃され、メンバー 1 名が死亡し、60 名が負傷した。問題の大統領令は、司法権の介入を認めず大統領の権限をほぼ無制限に認めるものだ。さらに、旧政権のムバラク氏によって指名された検事総長の解任も同大統領令には含まれている。モルシ氏側は、これらの措置が、司法府が新憲法制定を妨害することへの対抗措置であるとしている。モルシ氏は、大統領令が憲法制定までの一時的措置であることを強調しているが、新たな独裁政治の道を拓くものであるとの批判にさらされている。27 日には、反大統領とムスリム同胞団双方の集会が予定されており、予断の許されない状況が続く。
 海外紙は、今回のエジプト国内における対立の図式を詳細に報じている。

 反大統領勢力の構成について、ウォール・ストリート・ジャーナル紙は大きくスペースを割いて解説している。同紙によると、反大統領勢力は、互いに信頼関係を築くことが困難なほど慢性的に分裂している模様だが、IAEA の前事務総長でノーベル平和賞受賞者であるエルバラダイ氏が、リベラルおよび世俗派の結集を試みていると報じている。ただし、反大統領勢力を構成する司法府には、旧ムバラク政権と極めて密接に関係している者が、リベラル派を含む他の反大統領派から批判を受けていることも指摘している。
 一方ニューヨーク・タイムズ紙は、旧ムバラク政権下で任命された司法関係者の妨害から憲法制定作業を守るために大統領令が必要であったとのムスリム同胞団の見解を紹介している。また、フィナンシャル・タイムズ紙によると、司法府が呼びかけたストライキに呼応した例は、一部にしか確認できなかったと報じている。

 今回の混乱がエジプト経済に及ぼした影響として、フィナンシャル・タイムズ紙は、エジプトの株式指標がほぼ 10% 下げたと報じている。同紙によると、エジプトは、モルシ氏が大統領選に勝利して以来、株価が 35% 上昇し、世界でも有数の市場となっていた。また、今回の混乱が起きたのは、エジプトがここ 2 年間の政治的混乱に終止符を打つとともに、IMF から 48 億ドルの資金を得る合意を得ることによって、海外から資本を引きつけようとする矢先であったと同紙は報じている。

 混乱収拾の見通しについて、ニューヨーク・タイムズ紙は、25 日にモルシ大統領側のアドバイザーが司法府の最高機関に赴いて妥協案を提示し、同意を得たと報じている。同紙によると、これを受けて 27 日、大統領がアドバイザーとの協議に入る模様だ。ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、IAEA 前事務総長のエルバラダイ氏の発言として、軍隊介入の危険性を報じている。

Text by NewSphere 編集部