ガザに近づく戦争の足音–決着点は見いだせるのか

 4日に始まったイスラエルによるガザへの空爆は、19日現在も続き、死者は100人を超えた。イスラエル、ハマス双方の言い分は依然平行線をたどったままだ。ハマス側が14日の幹部殺害を端緒としてイスラエルを非難すれば、イスラエル側は、数か月に渡るロケット砲撃を食い止めるためだったと大義を振りかざす。ハマスがイスラエルの過剰な暴力を盾にとって「ガザ地区の封鎖解除と恒久的な攻撃停止」を求めれば、イスラエルは「ロケット攻撃の即時、かつ永久的な停止」をのまない限り、地上侵攻を敢行すると応じる。「これ以上の暴力は食い止められるべきである」という共通認識を現実にするために、当事者、中東各国、EU、ロシア、アメリカなどが、各自の思惑を秘めつつ、決着点を見出そうとしている。
 海外紙は、暴力のエスカレート、海外各国の停戦協議、「ハマス」ではなくガザに生きる庶民の現状にそれぞれ焦点を当てた。

 ニューヨーク・タイムズ紙は、暴力と足並みをそろえて激化するハマスの報復感情を採りあげた。ロケット砲撃の阻止という大義の下に始まった空爆が、結果的に火に油を注いでいること、イスラエル側が大半はハマスの兵士であると主張する死者の多くが、女性、子ども、老人であることを、具体的な数値を挙げて分析。ガザのロケットはすでに40%消費され、ほとんどが迎撃されている反面、エジプトとの国境沿いのトンネルの40%を爆破されるなど圧倒的な劣勢にあることには疑いの余地もないという。一方で、罪もない民間人が多数殺害されたことで報復感情が激化。地上侵攻の顕示についても、ハマス側は「口封じの脅迫的ブラフ」として、立ち向かう構えを見せており、さらには、2006年の、ガザ地区でのイスラエル兵の誘拐の例を挙げ、子どもを標的とする誘拐までも示唆しているという。
 
 しかし、地上侵攻を食い止めたい思いは、双方とも、国際世論とも同じ。ウォール・ストリート・ジャーナル紙は振り上げた拳の下ろしどころを模索する各国の動きを紹介した。ハマスとイスラエルの、エジプトを介しての対話も行われ、トルコやカタールも同調の構えだという。ニューヨークでは、国連安全保障理事会に、即時停戦を求める決議案が提出された。もっとも、かえってエジプト主導の停戦案に水をさしてしまうことを懸念するとして、親イスラエルのアメリカはこれを拒否しているという。一方、EUは19日、ハマスのロケット攻撃を非難しつつ、イスラエルに「相応の」反撃を求めた。さらに、ガザ地区の現状に「重大な懸念」を表明。すべての攻撃の即時停止を求めた。

 では、盛んな駆け引きの陰で、現実に砲弾を浴びている民衆の実情はどうなのか。フィナンシャル・タイムズ紙は、疲弊する市民の姿を浮き彫りにした。4年前の紛争からようやく立ち直りつつあった同地区。アラブの春、エジプトのイスラム系政権の樹立に希望を抱き、上向く経済に夢を見ていた人々は今、絶望しているという。ハマスは、エジプト、チュニジアなどの中東諸国の親和的姿勢を強調するが、結局は何らの進展も見いだせず、同地区が未だ、政治的・外交的に孤立していると断じる識者もいる。パレスチナ自治政府のアッバス議長が、水曜、テレビでパレスチナの結束を訴えた件についても、ガザに足を運びもしないことに失望の声が上がっているという。孤立と怒りと不安が蔓延するなか「石も、木も、人も」殺されてしまう地上侵攻を避けたいと人々は必死で願っていると報じられた。

Text by NewSphere 編集部