ガザ地区とイスラエル、砲弾と憎悪の応酬-各国の外交努力は実るのか?

 18日、イスラエル軍のガザ地区への空爆により、11人の民間人一家が死亡した。当局によれば「ハマスの幹部兵士」を標的としたはずの作戦だったが、亡くなった大半が女性と子どもという史上最悪の結果となった。
 14日、ハマスの軍事部門幹部ジャバリ司令官の殺害を皮切りに始まった空爆は、とどまるところを知らず、パレスチナ人の犠牲者は69人にのぼっている。これに対し、ハマスがテルアビブに発射したロケットが、かつてない精度と到達度を示し、3人の犠牲者が出たことで、イスラエル側はさらに態度を硬化させた。ネタニヤフ大統領は「大規模な作戦」による報復を宣言し、地上侵攻も辞さない構えだ。アメリカ、イギリスなどの西側諸国はイスラエルの「ロケット砲撃への自衛措置」に理解と共感を示しつつ、暴力の連鎖と拡大を警戒。エジプトなど中東諸国も、イスラエルが着々と準備を進めるガザ地区への地上侵攻を食い止めるための外交協議に入った。
 海外紙の観点は、空爆の実態、停戦に向けた両サイドの思惑、海外諸国の外交努力の実効性の三点に集中した。

 イスラエルによる空爆の詳細を報じたのは、ニューヨーク・タイムズ紙。爆撃が、国内外の報道機関が位置する2つのビルに及んだ模様を紹介した。2007年にガザを実効支配したハマスを、イスラエルとアメリカが「テロリスト」と見なしていることを紹介したうえで、「ハマスが使用している」という情報があれば、どんな建物でも攻撃対象になりうる現地の緊迫感を浮き彫りにした。
 こうした暴力の激化を受け、停戦のハードルはますます高くなっているという。ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、一部では誤爆とも報じられる悲惨な爆撃を盾に、ハマス側が停戦の最低限の条件として、ガザ地区の封鎖解除を挙げていると報じた。一方のイスラエルは単なる一時しのぎではなく、恒久的なロケット弾攻撃の停止を求める構えだとされる。フィナンシャル・タイムズ紙は、イスラエルは地上戦の準備完了を誇示してはいるが、同国の識者に、民間人とハマスの兵士の区別がつきにくい地上戦に突入すれば被害が拡大し、国際的な非難が強まるとの分析があることを紹介した。過去の例からしても、現在同国が享受する国際的な理解と援助が一気に引きあげられる懸念があるという。反対に、被害が拡大しながらも、ハマス側はロケット砲撃の精度の向上に自信をにじませ、エジプト、チュニジアなどアラブ諸国の共感を背景に、強気の構えであると示唆した。

 ウォール・ストリート・ジャーナル紙はさらに、海外諸国の外交努力に注目した。早期停戦を目標として、クリントン国務長官、チュニジア、トルコ、イスラエル、ハマスの各使節がカイロ入りしたことを紹介。エジプトは停戦への希望的観測を示してはいるものの、イスラエルからすれば、ハマスの「イスラムの同胞」でしかなく、外交的成熟に欠ける存在だという。アメリカの情報筋によれば、現在、双方の攻撃停止を第1段階、イスラエルによるガザ地区の封鎖緩和を第2段階とし、エジプト、カタール、トルコが後ろ盾となるという協定が画策されている模様。ただし、イスラエルが当事者不在の話し合いに失望と反発をみせている上、各国の、互いに手の内が見せられないにらみ合いが続いており、実りある結果が出るかはいまだ未知数だと分析している。

Text by NewSphere 編集部