存在感増すアメリカのシェールガス、変動する世界のエネルギー構造

 国際エネルギー機関(IEA)は12日、2012年度の「世界エネルギー見通し」を発表した。フラッキング(水圧破砕)などの採掘技術の開発に取り組んできた米国が、2017年までにシェールガスなどの生産量でロシアやサウジアラビアを抜き、世界一となる見込みだ。生産量は2020年をピークに伸びが鈍り、再び逆転される見通しだが、オバマ政権下で実施されるエネルギー効率の改善政策に伴い、2035年にはエネルギー自給国となる勢いだ。
 海外各紙は、技術の進歩を反映したエネルギーの新たなあり方や、地政学的な変化が取り上げられている。

 まず、エネルギーの新たなあり方として、消費効率の改善が注目されている。ニューヨーク・タイムズ紙によると、IEAのチーフエコノミストは「世界的なエネルギーシステムのあり方が変化している」と述べている。IEAの予測によると、アメリカにおける石油需要の拡大は55%であったのに対して、エネルギー効率の改善率は45%だったという。一方で、シェールガスのような非在来型の石油・ガスの生産が可能になったことは、世界的なエネルギー消費の削減に繋がるわけではないとも述べている。シェールガスの出現で、米国における石炭などのエネルギー需要が減少したものの、インドや中国、中東などの新興国で増える需要を満たすために使用され続けていくにすぎないとされる。同氏はまた、他国でもアメリカのような政策を行う必要があると強調している。

 また、アメリカがエネルギー自給国となることで、中東離れが予測される。ウォール・ストリート・ジャーナル紙によると、IEAは昨今のエネルギー市場における世界地図は「アメリカの石油・ガス生産の拡大によって塗り替えられていく」と述べている。同紙によると、中東に対するアメリカの石油依存は今後10年間でゼロになるという。代わりに、2035年までには中東のエネルギー資源の大部分がアジア諸国へ輸出されることになり、新たな貿易関係が生み出される見込みだ。ニューヨーク・タイムズ紙は、脱原発を表明している日本市場などは特に、エネルギー資源の需要が高まるとの予測から注目されていると報じた。

Text by NewSphere 編集部