近づく習近平新体制の幕開け 変わりゆく中国社会との摩擦

中国 中国では、10年に1度の権力移譲が行われる党大会が8日に行われる。経済優先の方針によって大きな発展を遂げてきた中国だが、後回しにしてきた諸問題が確実に膨らんできてもいる。極西部の民族的緊張、環境保護問題、土地収用問題にまつわる軋轢、共産党幹部の腐敗と富の独占に対する民衆の不満–。しかもソーシャルメディア時代の到来により、国民は今や、閉ざされた扉をこじ開け、自らデモを扇動したり、海外のメディアに触れたり、意見を発表したりし始めた。
 この大国を率いる指導者を含めた重要事項のすべてを秘密裡に決め、異端や異論を排除・抑圧する-—そんな旧態依然としたあり方はどこまで通じるのか。また、どこまでそれを続けるのか。発展の成果とひずみがせめぎあう中国から、目が離せない。

Financial Timesの報道姿勢―風雲児・王岐山、中央で大ナタをふるえるか―
 中国の今後を占うにあたり、王岐山氏の人事が注目されるとした。
 王氏は広東省の常務副省長当時、広東国際信託投資公司の破たん処理によって一躍名を上げた人物だと紹介。当時、中央が国有金融機関の尻拭いをするのは当然視されていた。しかし、同氏はそれを担保と目論む債権者に対し、自由経済の原則を貫いて破産という通を毅然として選んだのだと報じた。その後、北京SARS戦役を経て、同氏は「消火隊長」の称号を勝ち取ったと伝えた。
 四角四面な他の要人に比べ、ジョークを交えた気さくな話しぶりが人気の同氏だが、一部からは、傲慢だとの声もあるという。今回の人事では、当初、温家宝首相の後継とも囁かれたが、その職は今や李克強氏が当確となった。異端ゆえに評価の分かれる同氏をどれほどの要職につけ、どれほどの剛腕を発揮させるのか。それに注目が集まるとした。

The Wall Street Journalの報道姿勢―党大会を控え、ネット取締を強化する中央 人民の自由は―
 党大会を控え、中国では治安体制が強化されていることに注目した。当局は「絶対に」混乱を許さない構えで、北京の街角には大量の警備要員が配置され、店舗からは包丁が消え、タクシー乗客の不穏な動きを抑えるために、運転手は後席の窓を開けないよう指導されているという。
 とはいえ、これらはいわば、国家の大事に即したときの中国の「通例」だと指摘した。今回異例なのは、ネットでの世論取締の厳格化だという。中国のネット利用者は、10年前は5000万人だったが、今や5億3000万人超に膨れ上がった。ネットへのアクセスを阻止する当局の常道を、仮想プライベート・ネットワークス(VPN)でかいくぐるユーザーも登場していると伝えた。以前は利用者が少数のため「目こぼし」されてきたVPNも、今回はそうはいかないだろうと指摘。最近、省と全国の両レベルで当局が通信にフィルターをかけている公算が高く、中国のVPNユーザーはアクセスに苦慮している、と報じた。

Text by NewSphere 編集部