EU離脱?孤立するイギリス、自国でも政権の弱体化

Cameron 19日、EU首脳国会議が閉幕した。会議では、ユーロ圏共通の銀行監督機関の創設に向けた年内の法整備を合意。圏内銀行に資本を注入する救済基金への道に向けて1歩踏み出した。
 しかし、これは自国の一大産業として「シティー」に代表される金融業を持つイギリスにとっては利が薄い。このため、2011年に財政同盟案に拒否権を発動した経緯もある。さらに、緊縮財政下の国内情勢を受け、11月の次回サミットでは、EU予算のために自国の支出がこれ以上増える場合は拒否権を発動することを明言している。
 前回拒否権を発動した際も、国内世論は大きく揺れた。キャメロン首相は、英国の次期総選挙後に、EU脱退の是非を問う国民投票を行う意向を示している。

Financial Timesの報道姿勢―メルケル首相、イギリスのEU予算案への拒否権発動をけん制―
 メルケル独首相が、11月のEUの予算を審議するサミットに向けて、キャメロン英首相に対し、拒否権発動をけん制しているという。ドイツとしては、支出の上限をGDPの1%とする妥協案を用意し、イギリスにも支持を促しているが、EUの危機的経済状況を鑑みればそれすら実現困難なのは明らか。そうしたなかで、自国のこれ以上の支出を一切認めないとするキャメロン首相の発言は、事実上拒否権発動の宣言ともいえるため、メルケル首相はどうせまとまらないサミットは開く意義がないと述べたとされる。同首相としては、すでに電話でキャメロン首相に協力を要請したほか、11月に予定される直接会談で直接説得する予定だという。
 
International Herald Tribuneの報道姿勢―キャメロン英首相、EUからの脱退を否定―
 フィンランドのストゥブ欧州問題相が、英国がEUに別れを告げようとしているのではと語ったことに対し、キャメロン英首相は否定した。「イギリスと欧州における新たな関係構築」を望んでいると語った。イギリスのEUにおける存在感をアピールしつつ、自国の利益を守る姿勢を堅持したもの。EU離脱が自国の利益にはならないという考えを表明し、現状不満がただちに離脱にはならないと述べた。

The Wall Street Journalの報道姿勢―キャメロン英首相、閣僚辞任問題で自縄自縛―
 19日、警官を「平民」呼ばわりする侮辱的な発言をしたとして批判が強まっていたミッチェル国際開発相が辞任を表明した。約1ヵ月前の「事件」以来、キャメロン首相は辞任の必要はないとの姿勢を保ってきたが、世論の反発に押し切られた格好。ただでえ、名門イートン校出身で、エリート主義との印象が根強い首相だが、後任人事がまたもや同門だったことで、さらに非難の声も上がっているという。先週、オズボーン蔵相が2等車の切符で1等車に乗車するという騒動を起こしたことで市民感情はさらに悪化。経済対策が一定の効果を上げている功績を覆い隠すほどに、「金持ちエリート内閣」への逆風が強まっている、と報道した。

Text by NewSphere 編集部