IMF・世銀総会閉幕 各国の認識のズレ

IMF 13日に閉幕したIMF・世銀総会では、重大な経済問題を抱えるアメリカおよびヨーロッパに対して早急な行動が呼びかけられた。その一方で、立場の相違により各国の足並みがそろわない現実が垣間見える。
 世界経済が減速する中、各国の思惑を読み解く。

Financial Timesの報道姿勢―新興国の視点から報道―
 ブラジルの財務相は、IMF・世銀総会の議題はいつもヨーロッパの問題で占められるという。今回の会議がこれまでと異なる点は、唯一ヨーロッパの危機が他国に波及したことであるという。事実、IMFの「世界経済見通し」によれば、ブラジルは影響を最も大きく成長率見通しが悪化している。
 さらに、基金の運用権限に影響するクォータ(拠出金)の割り当て量を決定する算出式が不公平であるという指摘もあり、IMFは新興国にとって不満の対象となっている。IMFがギリシアなどヨーロッパ圏の国に対して、ダブルスタンダードとも言うべき寛大すぎる措置を取っていることも不満の一因となっている。

The New York Timesの報道姿勢―先進国に対する呼びかけに焦点―
 「財政の崖」(大型減税の期限切れと歳出カットによる不景気)が間近に迫るアメリカと、国家債務危機を抱えるヨーロッパに対して、迅速な行動が要請された。IMFの諮問機関であるIMFCは公式声明の中で、負債危機を抱える先進国が新興国の足を引っ張り世界経済が減速している、と述べている。特に先進国への輸出に依存する貧しい国々が痛手をこうむっており、世界で最もダイナミックな経済地域であるアジアへの影響も大きいとしている。「アジアだけで世界経済は牽引できない」(オーストラリア財務相)のだから、先進国が自ら動き、適切な行動をすぐにでも取らなければならない時期に来ていると指摘した。

The Wall Street Journalの報道姿勢―各国の足並みの乱れ―
 今回の会議では、経済大国間で意見の相違が随所に見られたと指摘した。第一に、新たな支援が必要となるギリシアについてである。IMFやフランスなどは、支援の条件となる緊縮財政策にある程度の時間をかけることに理解を示しているが、ドイツは急速な緊縮策を主張し続けている。第二に、アメリカの「財政の崖」に関連して、欧州中央銀行(ECB)のメンバーが「経済的な問題は何もヨーロッパに限ったものではない」としているが、米財務長官は、財政再建に支障をきたしている原因にはヨーロッパからの逆風があると述べている。第三に、中国は、領土に関する日本への不満から、財政相らをIMF・世銀総会に派遣しなかった。これは世界経済の新たな不確定要素となりうると指摘した。

Text by NewSphere 編集部