BAEとEADSの合併破談―ヨーロッパ統一戦線ならず―

BAE 10日、イギリスの大手軍需企業BAEシステムズ社と、フランス・ドイツ共同の航空大手でエアバス社の親会社であるEADS社との合併交渉の不成立が発表された。
 これを受けてBAEの株価は1.4%下落、320.9ポンド(約4万円)となった。一方EADSはむしろ投資家に安堵が広がり、5.3%上昇して27.48ユーロ(約2750円)になった。
 合併は、ボーイング社などの米国大手にヨーロッパを挙げて対抗するものであり、また新会社においては政府からの干渉が減ると期待されていたが、両社自身が合併に積極的であるにもかかわらず、イギリス・フランス・ドイツ各国の政府当局が、株式保有比率や本社所在地などの条件で合意できなかった。

Financial Timesの報道姿勢―防衛産業との合併の懸念―
 各国政府が互いに交渉失敗の責任を押し付け合っているとの論調で伝えている。また防衛企業が航空グループに加わることに対する株主からの難色の声を伝えたほか、軍需輸出がドイツではデリケートな問題である点や、バイエルンで来年選挙があり雇用確保に関心が注がれている点も指摘した。

International Herald Tribuneの報道姿勢―交渉の経緯―
 EADSはそもそも統治構造が複雑で、フランスは政府がEADS株15%を直接保有しているが、ドイツは政府が直接には保有していない。なおイギリスは、フランスやドイツが突出する主導は米国市場での商売上不利を招くと危惧していた。そのうえで、各国が互いに相手の影響力増大を牽制し合いつつ、自国の雇用確保を狙おうとする駆け引きの様子を詳しく描いている。

The Wall Street Journalの報道姿勢―ドイツに責任―
 緊迫した交渉の中で、イギリスとフランスは徐々に互いのギャップを狭めつつあったが、ドイツが自らの要求に固執し続けたとして、交渉失敗は主にドイツ政府の責任であるとの論調をとっている。合併は元々、両社が参加したユーロファイター戦闘機の商談に端を発するもので、危機感を共有する両社の間では協議が順調に進んでいた点を指摘し、話が進まない様子はヨーロッパ金融危機と同様の構図であって「ヨーロッパの指導者たちは国益に大陸益を優先するだけの才覚がない」と批判した。

Text by NewSphere 編集部