オバマ大統領、中国企業による風力発電事業買収阻止―背景にある国内事情に焦点―

 オバマ大統領は9月28日、中国系企業ロールズ社がオレゴン州で行った、風力発電関連4社の買収を阻止する大統領権限を行使した。これらの事業の所在地はすべて、軍事施設近辺の飛行制限空域に近く、安全保障上の懸念があるためだ。外国との企業取引が大統領命令で阻止されるのは22年ぶりである。ロールズ社の弁護士は、問題の地域ではすでに多くの風力発電が駆動しており、安保上の問題は皆無であると反論し、法的な対抗措置を検討するとコメントした。一方、米財務省高官は今回の決定事項は見直しの対象にならないとしている。
 異例の決定の背景にあるアメリカの事情とは?対抗する中国企業に勝ち目はあるのか?

Financial Timesの報道姿勢―オバマ政権の対中国企業姿勢-
 ロールズ社に対するオバマ大統領の買収阻止命令について、米外国投資委員会(CFIUS)は、「国家安保上の危険があると信ずるに足る根拠がある」とのみ発表した。ロールズ社側はこれを、具体性に欠ける違憲的判断だとして訴訟を計画していると報じた。ロールズ社側は訴えが通らなければ莫大な損失を被る結果となるが、大統領権限に挑むことを嫌う法廷の姿勢からして、同社にとって厳しい戦いになると予測している。
 なお、CFIUSはロールズ社以外の中国系の企業取引にも注視していると指摘した。今回のような、不透明な決定と説明は海外の事業誘致をくじくとする意見もあることを紹介した。

International Herald Tribuneの報道姿勢―オバマ大統領の2つの思惑とは―
 オバマ大統領の命令には2つの側面があるとみられる。大統領選を争うロムニー氏に、対中政策を「弱腰」と非難されたことへの対抗という見方が1つだとした。ただし大統領筋は、政治的姿勢とは無縁としている。もう1つは、中国への警戒意識だとした。具体的には、小型無人飛行機市場の寡占に終わりが見えている現在、市場進出に中国が強い興味を示していることを指摘した。実際、買収予定地は、遠隔操作の小型無人飛行機や爆撃機に随行する電子戦闘機の訓練所に近い。オバマ政権は無人戦闘機を使った戦争への比重を増やす一方で、他国が同じ手段に訴えることは危険視しているようだ、と分析した。

The Wall Street Journalの報道姿勢―近年のアメリカにおける、対外国投資のありかた―
 今回のようなケースは、決してロールズ社にとどまるものではないとしている。大統領命令や訴訟に発展する例がまれなのは、通常はCFIUSから反対を受けた時点で事業を見直すのがほとんどなためだ。CFIUSも大統領も認可しながら、議会の猛反発によって撤回されるケースもあることを紹介した。
 また、「安全保障上の理由」を建前と受け止めた諸外国が、対抗してアメリカ企業の進出を阻むのではという懸念も見られるとした。ただ、中国の閉鎖的な対外姿勢を顧みれば、ロールズ社の強すぎる反発が通る見込みは低いとみている。また、中国は政府と企業の関係が密接なため警戒を招きやすく、他にも問題視されている中国系企業の取引はあると指摘した。

Text by NewSphere 編集部