米FRB、量的緩和(QE3)実施を発表

13日、米連邦準備理事会(FRB)は連邦公開市場委員会(FOMC)の声明で、量的緩和第3弾(QE3)の実施を発表した。住宅ローン担保証券 (MBS)を月に400億ドル(約3.2兆円)買い入れる。制限を設けず、労働市場の見通しが大幅に改善するまで購入を継続する方針だ。また、事実上のゼロ金利政策を2015年半ばまで延長するとした。発表後、米株市場は大幅に上昇し、S&P総合500種は2007年以来の高値をつけた。原油や金相場も上昇した。一方ドルは下落した。なお今回の決定に際し、リッチモンド地区連銀のラッカー総裁のみ、これまで同様反対票を投じた。

<各紙の報道>

FTは、QE3の内容について解説し、バーナンキ議長のコメントやFOMCの声明を多く紹介した。QE3について、労働市場の改善へのコミットメントを明確にし、制限を設けない点が今までの施策と異なると報じた。2014年1月に任期を終えるバーナンキ議長にとって重大な決断であり、期限を設けないため後継者には厳しい状況になると指摘した。最後に、「高い失業率は多くの国民に困難を課し、人々のスキルと才能に対し計り知れない損失を招く」というバーナンキ議長のコメントを掲載した。

IHTはまず、国内政治の文脈から報じた。FRBは政治的に中立だが、大統領選まで2ヶ月を切ったタイミングであり、政治的な関係があるのではと予想している。“財政の崖”から増税・歳出カットが行われれば経済成長に危機をもたらす、と多くの専門家が警告しており、この状況がFRBの政策決定に影響したと分析している。なお、バーナンキ議長の再任に反対しているロムニー大統領候補を始め、共和党は決定に反対していると報じた。
また、QE3の決定を欧州中央銀行(ECB)の国債購入策と比較して報じている。ECBの施策は、金額に上限がある欧州救済基金に依存している点と、各国の法的制約など不確定要因がある点が、QE3とは異なると紹介した。

WSJは、QE3への期待と懸念を取り上げた。まず、量的緩和は長期金利を下げ、株などへの投資を促進するとともに、ドル安が期待されるとした。QE3は過去の施策と比べると規模は小さいが、効果のポテンシャルは大きいと分析している。労働市場の改善にコミットした決定であり、学者達がFRBの政策の効果を高めると主張していた方向に一致していると報じた。また、効果が上がらなければ追加策が行われる可能性が高いことにもふれた。一方、量的緩和や実質的なゼロ金利政策にも関わらず失業率が高いことから、FRBを批判する向きもあると指摘した。エコノミストへのWSJの調査では、5000億ドルの債権購入により失業率は年0.1%減少と予測されていると紹介した。バーナンキ議長も、QE3が万能薬ではないことを認識した上で実行可能なことをやるべきだ、と主張していると報じている。

Text by NewSphere 編集部