「日本へ行くなら旅館に」外国人観光客の間で「Ryokan」の人気上昇中

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 日本の旅館の歴史は長い。長い、といえば漠然としているが、ではどのくらい前から旅館は存在したのだろう。諸説あるが、時代はさかのぼって奈良時代のこと、旅の途中で病に倒れたり、食料が尽きて餓死したりする旅人を哀れんだ当時の僧侶たちが、「布施屋」と呼ばれる宿泊施設を設けたのが旅館の始まりとされている。こうした旅館は旅人の命を守るため、僧侶たちによって管理され、その後、江戸時代に入ってからは参勤交代のために地方と中央を行き来する大名や侍、そして商人をもてなすための宿泊所となったという。当時の旅館は現代のそれとはもちろん異なり、質素であったことは間違いない。しかし、旅人たちの疲れをいやす場としてあるべき姿と、その神髄は今も決してゆるぎなく息づいているといえるだろう。

◆旅館からRyokanへ
 その旅館が今、Ryokanとして海外でちょっとしたブームを巻き起こしている。これはいったい、何を意味するのか。簡単にいえば、「日本へ行くならホテルではなく、Ryokanに泊まろう」という訪日客が増えたことを示す。日本を旅するにあたり、マストなスポットというとミシュランのお墨付きレストランとか、ロボットがフロントで対応してくれるホテル、おなじみの洗浄シャワー付きトイレ、そして超豪華で至れり尽くせりな温泉などだろう。と同様に今や日本のRyokanも、世界中から日本めがけてやってくる外国人から大注目を集める存在になっているのである。それに応えるかのごとく、旅館経営者側も試行錯誤を重ねながら痒い所に手が届く完璧なおもてなしを提供することはもちろん、より快適な設備を完備するよう努力を重ねているのは必然である。

                                                                                                                 

 たとえば、こうした旅行客が宿泊先を選ぶ際、Ryokanは今年、最注目の宿泊施設として、すでに予約数もうなぎ上りといわれている(Airbnbによる2017年度の報告)。この世界的な傾向として明白なのは、ホテルに宿泊するより、訪れた場所の地元感が味わえるような宿泊施設が好まれる傾向にあるということだろう。

◆海外客からの人気ぶり
 奈良時代に発祥して江戸時代に繁栄した旅館は、温泉を楽しみながら宿泊できる形式の施設として、そのスタイルは現代にもきちんと引き継がれているが、海外旅行客は何を期待してRyokanに宿泊することを選ぶのだろうか。たとえば旅館には温泉がつきものだが、これもまた海外旅行客たちにとっては、癒しのスパともいうべき新鮮な体験を提供してくれるのだ。旅館で味わえる料理は地元産の魚や野菜をふんだんに使用したこだわりの和食で、これまた他の地では味わえない希少価値が魅力だ。さらに嬉しいことには、これら食事代が宿泊費に含まれていることである。日本旅行というと、何から何までデラックスで高価であるというイメージがつきまというが、この食事代込みの旅館なら非常にリーズナブルである。また、旅館で出される食事も特別だ。地元で収穫された魚や野菜が主に使用されその上盛り付けなどにとても凝っており、他の地では味わえない希少価値もある(ガーディアン紙)。

◆「禅」の国のおもてなし
 たとえばヨーロッパ諸国では日本といえば「禅」がイメージされ、それはイコール「精神の落ち着き」や「癒し」、「心の和平」と認知されている。この禅の哲学に則った日本らしさがあらゆる箇所にあふれた旅館に泊まれば、この上ない精神的満足感が得られる、と信じられているのだ。静寂な旅館の敷地内に敷き詰められた苔むず庭や、そこに植えられた木々や花は、あふれる自然の迷路に、訪れる者たちを迷い込ませることだろう。ベッドなど一切置かれていない広々とした畳敷きの部屋、そしてこれら部屋に入る前に靴を脱ぎ、くつろぐ際には浴衣にそでを通すなど、なにからなにまでが神秘的で、従業員によるサービスは至れり尽くせり。これほど珍しく、そしてゆったりできる宿は世界中のどこを探しても見つけることは非常に難しいだろう(ガーディアン紙)。

Text by カオル イナバ