旅行・観光競争力で日本が史上最高の4位に 高まる日本への関心と2020年に向けた課題

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 世界経済フォーラム(WEF)による『旅行・観光競争力レポートの最新版』が発表された。このレポートは「環境整備」「観光事業関連の政策、制度」「インフラ整備」「自然・文化財」の4つに大きく分類された、14つの指標によって136の対象各国を評価・ランキングするものだ。

 2015年に発表された前回のレポートから日本は5位ランクアップし、スペイン、フランス、ドイツ(いずれも前回から変動なし)に次ぐ4位となった。同レポートによると、今回の調査で得られた結果の一つとして発展途上国、特にアジア・太平洋地域の競争力の向上が著しいとのことだった。中でも過去最高の順位を記録した日本は、どのような点で評価されたのだろうか。

 まず目立った評価点は「文化財及び出張先として」の項目であった(4位)。特に文化財という点に関しては、2020年に控えた東京オリンピックや政府観光局のキャンペーンに見られるような伝統文化とポピュラーカルチャーの両方をアピールする戦略が功を奏していると考えられる。他にも交通機関やインターネット・サービスの充実も高評価だったが、特筆すべきは堂々の1位となった「顧客志向の度合い」だろう。まさに、日本のおもてなし文化が世界から高く評価されていることの表れだろう。また、燃油サーチャージの削減や国内航空の外国人旅行者向け割引サービスを実現するなどの取り組みが功を奏したのか、比較的高い物価にもかかわらず、コストを抑えることが可能になり、コスト競争性も前回から25位ランクアップし94位となった。

 一方で、自然環境に対する配慮の不足もレポートでは指摘されている。粒子状物質(PM)の排出量は2002年に主に都市部での規制が施行されたにもかかわらず依然として高く(93位)、海産資源の乱獲(71位)、危機に瀕する生物種の増加(129位)などといった問題は観光事業のみならず日本そのものの持続性や生態系に影響を及ぼしかねないという。

 WEFはこのレポートで用いた各指標を「旅行・観光部門の持続的発展と同時にその国自体の発展及び競争力の向上に寄与する事象や政策」を評価するものとしている。観光事業の発展は国内に新たな職業を生み、それを継続させることで国内経済の成長に寄与するが、アメリカの対外政策やBrexitなどといった、ここ最近の世界情勢の動向はまさに逆風といえるだろう。オリンピックを3年後に控えた今、世界からの評価が高いのは喜ばしいことではあるが、その後いかにしてこの立ち位置を守るかを考えることは、今後の日本の成長のためにも非常に有意義ではないだろうか。

 最後にWEF旅行・観光競争力ランキングのトップ10を紹介する。

1. スペイン
2. フランス
3. ドイツ
4. 日本
5. アメリカ
6. イギリス
7. オーストラリア
8. イタリア
9. カナダ
10. スイス

Text by 櫻井啓太