ダーウィンを更新する 生物学者が立ち返る古い理論、進化の謎を解く鍵に

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著:Pim Edelaarパブロ・デ・オラビデ大学、Professor of Biology)

 進化は生命にとって紛れもない事実だ。進化論そのものさえ進化しているほどである。最近では、かつて信用を失った数世紀前の考えが力強い復活を遂げている。標準的な進化論では説明のつかない観察結果を解き明かすのに役立つからだ。

 私が言っているのは、フランスの生物学者ジャン=バティスト・ラマルクが1809年に示した理論的提案にちなんで名付けられたラマルキズム(ラマルク説)のことだ。ラマルキズムとは、ある生物の親が環境からの要求に応じて、生涯のうちに特定の形質を獲得したり発達させたりし、それを何らかの形で子に伝えることで、子も同じ要求にうまく対処できるようになる、という仮説である。

 ラマルクは、なぜ生物がその環境にこれほどよく適合しているのか、そして化石記録に見られるように、生物が時間とともにどのように変化するのかを説明しようとした。もちろん、その半世紀後には、チャールズ・ダーウィンらによって別の説明が示された。ダーウィンの考えは自然選択(自然淘汰)を中心としている。同じ種の個体のなかには、生まれつき他の個体とは異なる特徴を持ち、それによって、その環境でよりうまく生き延び、結果としてより多く繁殖するものがいるという考え方だ。

 ダーウィンは、こうした違いが親から子へ受け継がれるなら、次の世代では、このように有利な個体の割合が相対的に高くなると主張した。言い換えれば、次の世代は全体として環境への適合度が高まるということだ。

 やがて、ラマルクの考えは信用を失った。決定的な転機の一つとなったのが、ドイツのアウグスト・ヴァイスマンが1904年に行った実験である。ヴァイスマンは、尻尾を失ったという変化が子に遺伝することを期待し、成体のネズミを繁殖させる前に、その尻尾を外科的に切断した。しかし、何世代にもわたってネズミの尻尾を切断しても、その変化が遺伝することはなかった。当時理解されていたラマルキズムに従えば、子は尻尾のない状態で生まれるはずだった。そのため、長年にわたり生物学の教科書では、ラマルクの理論は明確に反証された仮説として紹介されてきた。

◆ダーウィニズムでは説明しきれないこと
 しかし、ラマルクの考えが完全に間違っていたわけではない。例えば、小型の線虫であるシー・エレガンス(C. elegans)を見てみよう。成虫がウイルスや細菌への感染、飢餓、過酷な温度といった外部刺激にさらされると、時間とともに、それらにうまく対処できるよう適応する。そして驚くべきことに、その後に生まれる子も、生まれた時点から同じ刺激にうまく対処でき、さらに後の世代にもその効果が続く。

 研究によって判明したところでは、これは低分子RNA(リボ核酸)と呼ばれる、DNAに似た分子が遺伝することで起きる。成虫がストレスを受けると、効果的な反応を引き起こすため、遺伝子の働きを細かく調整する低分子RNAを作り出す。線虫が繁殖する際には、特定のタンパク質がこれらの低分子RNAを卵へ運ぶ。そのため、子は低分子RNAがもたらす恩恵を受けた状態で生まれてくる。

 これは、ある人がインフルエンザや麻疹のワクチンを接種して免疫を獲得すると、その後に生まれる子供や孫までもが全員、免疫を持って生まれてくるようなものだ。かつては、この種のエピジェネティックな分子の目印は生殖の過程で必ず消去され、子は一から自分自身の反応を作り上げなければならないと考えられていた。獲得した形質が実際に遺伝し得るという事実は、ラマルキズムが現実に働いている明確な例である。

 しかも、これは決して特殊な現象ではない。現在では、細菌や植物から動物まで、さまざまな生物で同様の効果を示す数十件、ひょっとすると数百件もの研究が存在する。例えばイネは寒さにさらされると、遺伝子に化学的な目印をつけることで、長く持続するように見える耐寒性を獲得する。これによって、熱帯を起源とするイネは北方へ分布を広げることができた。

 エピジェネティクスだけではない。学習した技能を世代から世代へ伝えることも、ラマルキズムの一形態である。例えば、シャチの母親がサケではなくアザラシを狩るといった、別の種類の獲物を捕らえる技能を身につけると、子もそれをまねて学ぶ。こうした技能の伝承は世代を超えて極めて確実に続き、その影響も非常に大きいため、異なる種のシャチが形成される一因になったようにさえ見える。

 では、ダーウィニズムは間違っているのだろうか。いや、そうではない。自然選択は今なお、進化の過程のかなりの部分を正確に説明している。しかし、私が新著『The Selective Organism: An Expanded Theory of Adaptive Evolution』で論じているように、ラマルク的な形質の獲得は、自然選択と並んで働く、進化の第二の原動力とみなすことができる。

 ダーウィン的進化では、種を構成する個体は自然選択の対象であり、その形質が環境によって試される。これに対し、ラマルク的進化では、個体は選択の主体となり、潜在的に備えている多数の形質のなかから、特定の形質を発現させる。例えば、シー・エレガンスは多数の異なるRNA分子を作る可能性があり、何も作らない可能性もある。環境に応じて、生存に役立つ分子を選び出すのである。その意味では、ラマルク的な形質の獲得も、選択の一形態とみなすことができる。

◆2つの理論はどう結びつくのか
 著書では、もう一つの主張も展開している。ラマルキズムが示すように、個々の植物や動物が、後天的に獲得した有益な形質を子に伝えられるなら、それによって子が生き残り、その後繁殖する可能性は高まるはずだ。

 そうであれば、この能力を備えること自体が、自然選択において有利に働くはずである。言い換えれば、ダーウィニズムは、こうしたラマルク的な能力が進化することを実際に予測している。つまり、両者は競合する理論ではなく、互いに両立する理論であり、組み合わせることで、生物が進化によって変化する仕組みを最もうまく説明できるのである。

 自然選択による進化は、「人類がこれまでに思いついた最高のアイデア」と呼ばれてきた。自然界を説明するだけでなく、ほかの分野にも幅広く応用されている。例えば、植物や動物の品種改良の方法を改善したり、微生物における抗生物質耐性の進化にどう対抗するかを考えたりするうえで役立ってきた。

 ラマルク的な側面を取り入れれば、こうした応用はさらに発展するはずだ。特定の土壌や気候、寄生虫、捕食者に生物をさらすことで、その子孫に利益をもたらせるのなら、農業生産を改善する新たな方法が見つかるかもしれない。保全についても同じことが言える。オーストラリアの科学者たちは、熱波への耐性を高めるエピジェネティックな反応を引き起こすため、研究室でサンゴを熱ストレスにすでにさらしている

 また、人間の親の行動が子供の肥満や依存症に影響を及ぼし得るのなら、予防プログラムは、それを受ける本人だけでなく、将来の世代にも恩恵をもたらすことになる。

 したがって、200年以上を経たいま、ラマルキズムを再び受け入れ、標準的な進化論の更新・改良版に組み込む時が来たのである。

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Translated by NewSphere newsroom

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