ネアンデルタール人絶滅、近親交配が主因ではない ネイチャー研究が示唆
ドイツのニューズ博物館に展示されるネアンデルタール人の復元胸像|Achim Wagner / Shutterstock.com
ネアンデルタール人は近親交配による遺伝的劣化が原因で絶滅したという有力説に疑問を投げかける研究成果が発表された。ベルギーやフランスで見つかった後期ネアンデルタール人のDNAを解析した結果、一部の集団では近親交配の痕跡は少なく、絶滅直前まで遺伝的多様性が大きく低下した証拠も確認されなかった。研究成果は科学誌ネイチャーに掲載された。
◆高品質ゲノムを含む27体を解析
研究を主導したのはドイツ・マックス・プランク進化人類学研究所などの国際研究チームだ。研究では、ベルギーとフランスの10カ所の遺跡から見つかった約5万2500年前以降の27人の後期ネアンデルタール人を対象にDNAを解析した。そのうちベルギー・ゴイエ遺跡の約4万5000年前の個体では、22.4倍カバレッジの高品質ゲノムの解読にも成功した。
これまでネアンデルタール人については、シベリア・アルタイ地方で発見された個体のゲノム解析から、近親交配が繰り返された小規模集団だったことが示されていた。そのため、遺伝的多様性の低下や有害変異の蓄積が絶滅を招いたという見方もあった。
◆北西ヨーロッパでは交流が維持されていた
しかし今回解析した北西ヨーロッパの個体では事情が異なっていた。
研究チームは、近親交配が起きるとゲノム中に現れる長いホモ接合領域を調べたところ、ベルギー周辺のネアンデルタール人にはアルタイ地方の個体で見られたような顕著な痕跡は確認されなかった。むしろクロアチアのビンディヤ洞窟の個体と同程度で、比較的大きく、互いに交流する集団に属していた可能性が高いという。
解析では、ベルギーやフランスの後期ネアンデルタール人は互いに近い遺伝的関係を持ちながらも、近親者同士の交配を繰り返していた証拠は見つからなかった。また、有害変異が時間とともに増えた形跡や、絶滅直前に遺伝的多様性が急速に低下した証拠も確認されなかった。
◆絶滅は複数の要因が重なった可能性
さらに研究チームは、約4万7000年前頃から北西ヨーロッパではネアンデルタール人と初期の現生人類が同じ時代に生きていたとみられるにもかかわらず、今回解析したネアンデルタール人のゲノムからは最近の現生人類との交雑を示す証拠は見つからなかったとしている。
論文は、北西ヨーロッパのネアンデルタール人は地域間で遺伝的なつながりを維持しており、近親交配はネアンデルタール人全体に共通する特徴ではなかったと結論付けた。その上で、遺伝的劣化の進行が絶滅の主因だったことを示す証拠は得られず、ネアンデルタール人の消滅は気候変動や人口減少、現生人類との競合など複数の要因が重なって起きた可能性が高いことを示唆している。




